●こんなお話
ウィリアムズ姉妹を育てたお父さんの話。
●感想
物語は、ロサンゼルスの治安の悪い地域に暮らす一家が、世界一を目指して奮闘する日々から始まる。主人公は父親。ヴィーナスとセリーナという幼い姉妹を、テニスの頂点に立たせるという強い信念を持ち、自らトレーニングメニューを組み立て、娘たちを導いていく。どんなときも手にしていたのは分厚いノートと、描いた“ドリームプラン”。その内容は、家族で世界の舞台へと飛び出していく未来が、詳細に書き込まれていた。
警察に追われ、KKKの暴力からも逃げてきたという父親自身の過去を娘たちに語りながら、彼は娘たちの練習風景を撮影してビデオ資料を作り、数々の名コーチたちにプレゼンテーションを行っていく。しかし、最初はまったく相手にされず、隣人からは「スパルタ親」と非難され、地域のギャングに絡まれるという厳しい状況の中でのトレーニングが続いていく。
それでも諦めない主人公は、ついに有名選手を育てたことで知られるコーチのもとを訪れ、娘の実力を見せる。その姿に心動かされたコーチは指導を引き受けるが、条件はヴィーナスだけを指導するというもの。セリーナは母親と二人三脚で練習を続けることになる。やがてヴィーナスはジュニア大会に出場して優勝。父は「謙虚であれ」と教えるために、ディズニーの『シンデレラ』を娘に見せたりもする。
だが主人公は、娘が早くから勝ち星を重ねることに疑問を持ち、試合の出場を止めてしまう。やがてコーチとも袂を分かち、家族で新たな地に移って別のコーチと契約。そこでもヴィーナスの試合出場を拒み、スポンサー契約すら断る姿勢に、周囲は戸惑いを見せていく。長い間、公式戦から遠ざかる中で、妻が夫に「あなたは逃げているだけ」と真っ直ぐにぶつかる場面は印象深く、そこで初めて父親が自らの振る舞いを見つめ直すことになる。
物語は、プロデビュー戦に挑むヴィーナスが、ランキング1位の選手を追い詰める場面へと繋がっていく。惜しくも勝利はならなかったものの、観客からの喝采を受けてコートを去るヴィーナスの姿は美しく、その後、姉妹が世界のトップ選手として君臨するようになったことを告げるテロップで物語は締めくくられる。
スポーツ伝記として、家族で力を合わせ、過酷な環境を抜けていく姿に胸が熱くなりました。いわゆる“普通”とは異なる方法で娘たちを導こうとする父に対して、周囲の困惑が描かれていく展開も興味深く、厳しさが目立つ父親像に対して、母親の存在がきちんとバランスを取っている点も良かったです。
また、時折挿入されるニュース映像や社会背景の描写が、単なる成功譚にとどまらないリアリティを加えていて、アメリカという国の中で黒人家族が夢を追うという意味合いがしっかり伝わってきました。そして、物語ではあまり描かれなかった主人公の過去の人生にも興味が湧いて、なぜそこまで強い意志を持てたのか、そのルーツをもっと知りたくなった作品でした。
☆☆☆☆
鑑賞日:2022/12/31 NETFLIX
監督 | レイナルド・マーカス・グリーン |
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脚本 | ザック・ベイリン |
製作総指揮 | セリーナ・ウィリアムズ |
ビーナス・ウィリアムズ |
出演 | ウィル・スミス |
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アーンジャニュー・エリス | |
サナイヤ・シドニー | |
デミ・シングルトン | |
トニー・ゴールドウィン | |
ジョン・バーンサル |