●こんなお話
息子の冤罪を晴らすために行きすぎちゃうお母さんの話。
●感想
主人公は、知的障害のある息子を心から溺愛している母親。その息子が、ある女子高生殺害事件の加害者として突然逮捕されてしまうというところから物語が始まります。信じていた日常が一転して崩れ去るなかで、主人公は息子の無実を信じ、真実を求めて奔走していくことになります。
この作品は、冤罪の構造を丹念に描きながら、事件の真相を探るミステリーとしても展開していきます。中盤で、息子の友人が疑わしいと目星をつけた主人公が、彼の自宅に忍び込み、隠れて証拠を探すシーンなどは、非常にスリリングでした。小さな家の中で、何が起こるかわからない緊張感が常にあり、観ていて自然と体が固くなってしまうような時間が流れていたと思います。
その後も物語は次々と新たな事実を積み重ねていきます。被害者の女子高生が裏で売春を行っていたのではないかという情報や、彼女のスマートフォンに保存されていた写真の謎、さらに祖母がなにか鍵を握っているらしいという展開など、真相に近づくたびに観客の視線を引き込んでいく構成が巧みでした。
息子は知的障害があるがゆえに、警察の強引な取り調べによって都合よく「犯人」に仕立て上げられていってしまいます。その取り調べの場面もまた印象深く、取調室の空気が異様に冷たく、何かが確実に歪んでいるということが肌感覚で伝わってきました。
やがて、事件現場を目撃していた人物の証言が明らかになってから、物語は意外な方向へと進みます。主人公と息子が取った行動は、常識的な判断や共感をいったん脇に置くような大胆なものとなり、感情の置きどころがわからなくなる瞬間もありました。しかし、それがある種のカタルシスにつながっていて、映画全体としての構造にはしっかりと収まっていたと感じています。
伏線の回収も鮮やかでした。「なぜ、あんな目立つ屋上に遺体を置いたのか」や、「記憶を失ってしまう理由となる“ツボ”」といった、冒頭から不自然に感じていた要素が、終盤に向けて見事に収束していきます。一本の線でつながっていく気持ち良さがあり、構成力の高さを感じることができました。
もちろん、被害者の血がついていたことと鼻血の出やすさが結びついて、安易に別の人が逮捕されるという展開には、多少のご都合主義のような印象もありましたが、それを差し引いても物語としての完成度は高く、二時間があっという間に過ぎていきました。
☆☆☆☆
鑑賞日:2011/05/02 DVD 2020/04/29 NETFLIX
監督 | ポン・ジュノ |
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脚本 | パク・ウンギョ |
ポン・ジュノ |
出演 | キム・ヘジャ |
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ウォンビン | |
チン・グ | |
ユン・ジェムン | |
チョン・ミソン | |
チョン・ウヒ |