●こんなお話
気弱で優しい書店員が美人さんに恋をして幼馴染の美人さんに相談して、結局幼馴染のことを気になっちゃう話。
●感想
物語は、冬の街にきらめくイルミネーションと、クリスマスらしい暖かさをたたえた景色のなか、美男美女たちが織りなすラブストーリーとして始まる。まるで1990年代のトレンディドラマをそのまま令和の世に持ち込んだかのような展開に、思わず頬がゆるみ、どこか懐かしい気持ちにさせてくれる。偶然の出会いに運命を感じ、偶然が重なって恋が動き出す王道のストーリーに身を任せれば、ある種の安心感のようなものも得られる構成となっています。
物語の中盤では、主人公の心情を表す存在として、彼の内面に語りかけるアニメキャラクターが登場する。これは作品全体のモチーフともなっている仕掛けであり、演出としてはユニークな試みではあるものの、感情移入の邪魔になってしまっていた印象も否めなかったです。主人公の心の声として機能するはずの存在が、かえってストーリーのテンポを遮ってしまっていたように感じました。
主人公は、街で偶然ぶつかった韓国人女性に一目惚れし、その女性が偶然にも自分の幼馴染の仕事仲間であったことから、3人の関係が徐々に動き出していく。主人公は彼女を振り向かせたい一心で、幼馴染に恋愛指南を頼みながら、買い物や食事、デートのシミュレーションを重ねていく。けれど、その幼馴染も密かに主人公に想いを寄せているという、まるで漫画から飛び出してきたかのような三角関係が展開されていく。
ただ、主人公と韓国人女性とのデートシーンがやや単調で、彼女が突然自らの過去を語り始める場面も含めて、観ていてどのような心持ちでその関係を受け止めればいいのか、少し戸惑う瞬間がありました。2人の心の距離が近づいていく過程が描かれてはいるものの、その流れがやや急で、気持ちの積み重ねが感じづらかったのは少しもったいなかったです。
物語のクライマックスでは、別れの予感が漂うなか、去りゆく相手を追いかけて道路を走るという王道の演出が待っている。この演出はラブストーリーとしては定番でありつつも、現代の感覚で観ていると「電話やメッセージをすればいいのでは」と冷静になってしまう部分もあり、ややロマンチックさが空回りしてしまっていた印象がありました。
印象的だったのは、生田斗真さんが演じるキーパーソン的な存在。仕事もできて、言動もスマートで、物語においては“頼れる兄貴分”のような役どころかと思いきや、実際にはやたらとキザなセリフを連発し、登場するたびに笑ってしまうような独特の立ち位置にいて、コメディリリーフ的な存在として記憶に残りました。
過去の回想シーンでは、子ども時代の想い出や関係性も描かれるのですが、全体のテンポとの兼ね合いで唐突に挿入される場面が多く、エモーショナルなはずのシーンがやや淡泊に感じてしまった部分もありました。それでも、ラブストーリーというジャンルの枠内で、クリスマスという特別な季節のムードを生かした一本として楽しめる内容だったと思います。
☆☆
鑑賞日: 2015/12/26 Blu-ray
監督 | 犬童一心 |
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脚本 | 菅野友恵 |
原作 | 中村航 |
出演 | 相葉雅紀 |
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榮倉奈々 | |
ハン・ヒョジュ | |
生田斗真 |