●こんなお話
ドイツ占領下のポーランドで蜂起するポーランド人たちの戦いの話。
●感想
穏やかな日常風景から物語は始まる。若者たちが何かを企てているような緊張感のあるシーンに切り替わり、主人公は妻と幼い子どもを残してポーランド軍に加わり、ついにワルシャワ蜂起が始まる。
そこから一気に凄惨な戦争描写に突入。直前まで普通に会話していた人物が、次の瞬間には血まみれの遺体として転がっている。その現実がただただつらく、戦争の非情さを突きつけてくる。頼みの綱であるソ連軍も現れず、弾薬も尽き、状況は徐々に悪化していく。爆弾の爆発による大きな衝撃音のあと、空から雨が降り注ぎ、見上げるとそこには…。そんな印象的な描写は新鮮で、これまでの戦争映画ではあまり見かけない演出でした。
ストーリーは、主人公の青年が次々と戦闘に巻き込まれ、仲間が死んでいく様子を目撃しながら逃げ場を探して彷徨う形で展開していきます。戦闘に巻き込まれて負傷し、逃げてはまた戦うという流れの繰り返しで、見ているこちらも彼と一緒にワルシャワ蜂起を追体験していく構造になっていました。
ただ、歴史映画として重厚なトーンで進むかと思えば、急にミュージックビデオのような演出が挟まれたり。これには驚きがありましたが、同時に実際の歴史を知る人にとっては違和感があるかもしれないという余計な心配もしてしまいました。
また、主人公は家族を失っているはずなのに、逃避行の中で出会った女性と関係を持つ展開があり、しかもそれが一度ではなく。この描写には少し引いてしまった部分もありましたが、死と隣り合わせの極限状況では「子孫を残す」という本能的な行動なのかと考えさせられました。
ワルシャワ蜂起というテーマを扱った作品をあまり観たことがなかったので、その歴史を知るという意味でも非常に意義のある作品でした。戦争の理不尽さ、命の軽さ、そして人間の本能が交差する様を強烈に体感できた映画でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2016/01/26 DVD
監督 | ヤン・コマサ |
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出演 | ユゼフ・パウロフスキー |
ゾフィア・ヴィフワチュ | |
アンナ・プロシュニアク |