●こんなお話
高麗時代でいろんな剣士たちが飛び跳ねながら戦う話。
●感想
スローモーションを多用した映像が非常に印象的で、ただそれだけで十分に目を惹く作品でした。物語の随所でゆったりと流れる時間。そのなかを、精緻に仕立てられた衣装をまとった俳優たちが歩き、美術セットの隅々にまで気を配った空間が映し出されていく。まるで一枚一枚の画が静かに語りかけてくるかのようで、その美しさに見入ってしまうひとときが何度もありました。
しかし、その美術や映像の魅力とは裏腹に、物語の構成には少しばかり戸惑いがありました。舞台は、かつて存在した三人の剣士の時代からはじまり、やがてその子どもたちへと時間が移り変わっていきます。けれども語り口が一定せず、あるシーンではひとりの登場人物の心の声が響き、次の場面ではまた別の人物の語りに変わる。物語を追いながらも、いったい誰の視点でこの世界を見ればよいのか、観ている側は少しずつ足元がふわついていくような感覚に陥ります。
人物関係の描き方もまた、少し距離を感じるものでした。育ての母が実の母でなかったという展開に差しかかったとき、その母親がどのような思いで娘と暮らしてきたのか、その心の揺れが描かれないまま、突然に親子の関係についての説明が挿入されます。結果として、観ている側はその親子にどのような情を重ねればよいのか、道筋が見えないまま場面が進んでいきました。
また、序盤から何度か登場する剣の師匠と思しき人物。中盤になって、ようやく主人公との訓練の場面が描かれますが、なぜこのタイミングだったのか。どうしてこの人物が主人公に剣を教えようと思ったのか。その想いも語られないため、ひとつの節目としての深みを感じ取ることが難しくなっていたように思います。
作品の中心には、過去に生きた三人の剣士とその因縁があり、その系譜のなかに現在の登場人物たちが位置づけられています。その構造自体はとても魅力的でしたし、もっと物語としての軸が整理されていれば、悲恋を描く物語としても、あるいは復讐の道を歩む物語としても、胸に残るものになったのではないかと思います。
映像の美しさに心を奪われつつも、物語の糸がもう少し繊細に織られていれば、と感じました。
☆☆
鑑賞日: 2016/07/20 DVD
監督 | パク・フンシク |
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出演 | イ・ビョンホン |
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チョン・ドヨン | |
キム・ゴウン | |
ジュノ | |
ペ・スビン |
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