●こんなお話
火星から持ち帰った砂の中に生物がいて、案の定アタックされて1人また1人とやられていく話。
●感想
火星で採取された土壌サンプルを積んだ探査機「ピルグリム7号」が地球へ帰還するところから物語は始まる。探査機は大気圏突入前に損傷を受け、国際宇宙ステーション(ISS)の乗組員たちはロボットアームでの回収を試みるものの失敗しかける。そこで船外活動中だったロリー・アダムスが危険を承知で探査機を捕獲し、無事ISSへ搬入することに成功する。
ISSには医師のデビッド・ジョーダン、生物学者ヒュー・デリー、検疫担当のミランダ・ノース、艦長エカテリーナ・ゴロフキナ、システム担当のショウ・ムラカミ、そしてパイロットのロリー・アダムスの6人が滞在していた。火星の土壌を分析したヒューは、休眠状態の単細胞生物を発見し、慎重に培養を開始する。
細胞は急速に活動を始め、多細胞生物へと驚異的な速度で成長していく。この歴史的発見に世界中が沸き立ち、地球の子どもたちによる投票によって、その生命体は「カルビン」と名付けられる。ヒューはカルビンを詳しく調査し、すべての細胞が筋肉や神経、脳の機能を兼ね備える極めて効率的な生命体であることを突き止める。
しかし、培養中の環境変化によってカルビンは突然活動を停止する。ヒューは刺激を与えれば再び活動すると考え、電気ショックを与えて蘇生を試みる。ところがカルビンは突如として凶暴化し、ヒューの手を強烈な力で締め上げ、骨を砕きながら腕を粉砕してしまう。
ロリーは実験室へ飛び込みヒューを救出するが、その隙にカルビンは密閉容器を破壊して脱走する。消火装置によって酸素を奪い閉じ込めようとするものの、カルビンは工具を利用して換気口を開け、自力で施設内へ逃げ出してしまう。
逃走したカルビンは実験用ラットを捕食し、さらに巨大化していく。ロリーは火炎放射器で焼き払おうとするが、カルビンは彼の脚へ絡みつき、そのまま口から体内へ侵入する。喉を通って内臓へ入り込んだカルビンは体内から臓器を食い荒らし、ロリーは命を落とす。カルビンはロリーの死体を栄養源としてさらに成長し、知能も飛躍的に発達していく。
カルビンは冷却装置や配管を利用してISS内部を自在に移動し始める。その頃、通信装置を修理するため船外活動を行っていたエカテリーナの宇宙服内部へ侵入し、冷却装置を破壊する。宇宙服内では冷却液が漏れ出し、エカテリーナは窒息状態となる。デビッドはハッチを開けて救助しようとするが、感染を防ぐためエカテリーナは自ら宇宙空間へ流される道を選び、そのまま命を落とす。
生き残ったデビッド、ミランダ、ヒュー、ショウはカルビンを封じ込めようと奔走するが、カルビンは配線や換気ダクトを利用しながら巧みに人間たちを翻弄する。
重傷を負ったヒューは、自ら発見した生命体であるカルビンに次第に執着するようになり、「カルビンは生き残ろうとしているだけだ」と危険性を軽視し始める。しかし、その思いとは裏腹にカルビンはヒューへ襲いかかり、全身へ絡みついて体内から臓器を破壊し、彼も命を落としてしまう。
救助船が来たと思ったら実は宇宙船ごと隔離しようとする作戦が実行されそうになるが、事情を知らないショウが救助船のハッチを開けてカルビンに襲撃されてショウも命を落とす。
残されたデビッドとミランダは、カルビンを一方の脱出ポッドへ誘導し、自らも乗り込んで宇宙の彼方へ流す作戦を立てる。もう一方の脱出ポッドにはミランダが搭乗し、地球へ帰還して人類へ危険を知らせる計画だった。
作戦は成功したように見えたが、ISS付近へ飛来した宇宙デブリが脱出ポッドへ衝突し、2機の進路が入れ替わってしまう。
観客にはミランダが地球へ向かい、デビッドがカルビンと共に宇宙へ消えていくように映し出されるが、地球へ降下したポッドへ漁師たちが近づき、救助のためハッチを開けようとする。中にはカルビンに全身を包み込まれたデビッドが閉じ込められていた。デビッドは必死に「開けるな!」と叫ぶものの、その声は外には届かぅ。漁師たちは救助だと思い込み、ポッドを開けようとする。
一方、本当に宇宙の彼方へ流されていたのはミランダだった。でおしまい。
閉鎖された宇宙ステーションを舞台に、未知の生命体へ襲われるという、これまで数え切れないほど作られてきた王道のSFホラーを、ハリウッドらしいスケールと映像美で見事に描き上げた作品でした。設定自体は決して珍しいものではありませんが、安っぽさはまったく感じられず、約100分間にわたって緊張感が途切れない完成度の高さに引き込まれました。
冒頭では長回しを活用しながらISSで働く乗組員たちの日常や役割が自然に紹介され、それぞれの人柄や関係性が短時間で理解できる構成になっています。その穏やかな空気から一転し、火星から持ち帰った生命体カルビンが暴走した瞬間、一気にサバイバルホラーへ切り替わるテンポの良さも見事でした。
豪華キャストが集結していることも大きな魅力です。ジェイク・ギレンホール、ライアン・レイノルズ、レベッカ・ファーガソン、真田広之といった実力派俳優ばかりなので、「この人は最後まで生き残るだろう」という予想が次々と裏切られていきます。誰がどの順番で命を落とすのかまったく読めず、サバイバル映画として最後まで新鮮な気持ちで楽しめました。
物語は「カルビンを隔離したはずなのに逃げられる」「設備が故障する」「修理のため危険な場所へ向かわなければならない」と、ジャンルのお約束ともいえる展開が続きます。それでも飽きさせないのは、カルビンの生態や攻撃方法に工夫が凝らされているからでした。体内へ侵入して内臓を破壊したり、配管や冷却装置を利用して移動したりと、単なる怪物ではない知性を感じさせる描写が恐ろしく、次に何をするのか分からない緊張感が続いていきます。
また、犠牲者が出る場面でも過剰な演出にはせず、残された乗組員たちが冷静に状況を受け止めながら任務を遂行しようとする姿が印象的でした。俳優陣が静かな芝居で恐怖や絶望を表現しているため、大げさなリアクションに頼らずとも十分な説得力があります。宇宙飛行士としての責任感や使命感も丁寧に描かれており、最後まで自己中心的な行動を取る人物がほとんどいない点も好印象でした。
一方で、少し気になる部分もありました。カルビンが巨大化するにつれて、顔が花のように開き、その中から口が現れるデザインになりますが、この手のクリーチャー映画では見慣れた造形でもあり、個人的には少し格好良さに欠ける印象を受けました。
また、生物学者ヒューがカルビンを発見した際の反応がやや分かりづらく、故意だったのか偶然だったのか判断しにくい演出も気になりました。真田広之さん演じるショウの周辺でも、ソユーズ側の状況や誰が何をしているのか把握しづらい場面があり、もう少し整理されていれば物語へさらに没入できたように思います。
それでもラストの展開は非常に印象的でした。脱出ポッドの行き先が入れ替わる結末は予想を裏切る皮肉に満ちたオチで、思わず笑みがこぼれてしまうほど見事でした。デビッドが必死に「開けるな」と叫び続ける一方で、善意しかない漁師たちが救助しようとする構図は、どうしようもない絶望感とホラーらしい余韻を同時に味わわせてくれます。
王道のSFホラーだからこそ、丁寧な演出と豪華キャスト、そして緊張感あふれる映像で最後まで見応えのある作品に仕上がっていました。宇宙という閉鎖空間を最大限に生かしたサスペンスと、後味の良い皮肉なラストを存分に堪能できる一本でした。
☆☆☆☆
鑑賞日: 2017/07/19 チネチッタ川崎 2018/03/11 Blu-ray 2026/07/01 U-NEXT
| 監督 | ダニエル・エスピノーサ |
|---|---|
| 脚本 | レット・リース |
| 出演 | ジェイク・ギレンホール |
|---|---|
| ライアン・レイノルズ | |
| レベッカ・ファーガソン | |
| 真田広之 | |
| アリヨン・バカレ | |
| オルガ・ディホヴィチナヤ |


