映画【検察側の罪人】感想(ネタバレ):情報量とテンポが圧巻!骨太なドラマと原田演出が光るサスペンス

KILLING FOR THE PROSECUTION
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●こんなお話

 検察側の罪人の話。

●感想

 冒頭のタイトルクレジットと印象的な音楽が非常に魅力的で、物語の世界に引き込まれる導入が素晴らしかったです。また、主演以外の俳優陣についても、あまり見かけない方々が多かったにもかかわらず、重厚な演技を披露されており、原田眞人監督作品ならではの緊張感や奥行きが感じられました。

 ただし、原田監督特有のスピーディーかつ情報量の多い編集は今回も健在で、物語の舞台背景や人物関係を把握する前に、多くのキャラクターが固有名詞を連発して物語の本筋に入っていくため、冒頭から理解に苦しむ場面も多く見受けられました。

 物語の根幹である「主人公が冤罪を犯してまで、過去の犯罪に対して復讐を果たそうとする」というテーマは非常に興味深いものの、その動機や揺らぎの描写がやや薄く、観客として深く感情移入するのが難しい印象もありました。

 また、松重豊さん演じる謎の「何でも屋」の存在は、フィクションとしての面白さはあるものの、現実味が薄く、銃器や暗殺といった描写によって作品全体のリアリティが損なわれていた点も否めません。二宮和也さん演じる若手検事についても、内面の葛藤を表現したかったのだと思いますが、単に感情を叫ぶシーンが目立ち、やや表面的に感じられました。

 さらに、老夫婦殺人事件の真相と並行して描かれる主人公の親友である議員のストーリーもかなりの比重を占めていますが、日本の権力構造を批判するテーマであるにもかかわらず、その展開が急すぎて理解が追いつかない場面もありました。

 木村拓哉さん演じる主人公が食事を共にする中年男性たちが誰なのかも明確でなく、ノイズと感じる場面が多くありました。親友の議員とホテルの一室で会うシーンに同性愛的な示唆を感じたものの、そうでもなかったりと、観客の理解を混乱させる演出も散見されました。トランプ元大統領の誕生日の話や、突然登場するインパール作戦、章立てに挿入されるタロットカードなども含め、演出意図が掴みづらい場面が続きました。

 葬儀で登場した泣き女たちの演出も印象的でしたが、やや奇抜すぎて物語の主軸から注意が逸れてしまう感があり、全体として「正義とは何か」「法律の在り方とは何か」「殺人事件の真相は」といったテーマがどれも中途半端に感じられてしまった印象です。

☆☆☆

鑑賞日:2019/06/21 Blu-ray  2018/08/27 川崎チネチッタ

監督原田眞人 
脚本原田眞人 
原作雫井脩介
出演 木村拓哉 
二宮和也 
吉高由里子

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