●こんなお話
大人になったクリストファー・ロビンと彼に再会したプーさんたちのドタバタの話。
●感想
くまのプーさんや仲間たちのぬいぐるみのような愛らしい造形に癒される、心温まる作品でした。彼らの質感や動きは実写と見事に融合していて、本当に存在しているかのようなリアリティと、温もりのあるビジュアルが非常に魅力的でした。
また、大人たちとはまったく異なる価値観で、自由気ままに行動するプーさんやティガーたちの姿は、どこか子どものような純粋さを感じさせ、観ているだけで微笑ましくなります。彼らのとぼけた発言や行動の数々には、何度も笑顔にさせられました。
一方で、物語全体の構成については、若干の物足りなさを感じたのも事実で。主人公のクリストファー・ロビンがロンドンと“100エーカーの森”を行き来するという展開が繰り返され、物語としての起伏がやや少なく、退屈さを覚える場面も。とりわけ中盤は、テーマや展開の広がりに乏しく、もう少しテンポよく話が進めばより楽しめたのではと感じます。
クライマックスでは、クリストファーが忘れてしまった重要書類を届けるために、プーさんたちがロンドンの街中を駆け回るシーンが描かれます。この場面はビジュアル的にも楽しく、ユーモアも散りばめられていましたが、この世界における「プーさんたちの存在のルール」が少々曖昧で、少し戸惑いました。プーさんたちはクリストファーにしか見えない存在なのかと思っていたところ、タクシー運転手や警官など一般の人々にも普通に見えているようで、リアリティラインに一貫性がなく、物語に没入しきれない一因にもなっていたように思います。
また、主人公が直面している職場での問題――自らが所属する赤字部門のリストラ危機にどう立ち向かうのかというビジネスドラマ的な要素にも、明確な解決やカタルシスがあまり感じられず、その点はやや消化不良でした。
とはいえ、全体としてはプーさんたちの存在そのものが癒しであり、ストーリーの深さよりもキャラクターの魅力や、懐かしさを楽しむことに主眼が置かれている作品だと感じます。ノスタルジックな雰囲気と心和む映像美を求めている方には、十分に楽しめる作品ではないでしょうか。
☆☆☆
鑑賞日:2019/06/19 Blu-ray
監督 | マーク・フォスター |
---|---|
脚本 | アレックス・ロス・ペリー |
トム・マッカーシー | |
アリソン・シュローダー |
出演 | ユアン・マクレガー |
---|---|
ヘイリー・アトウェル | |
ブロンテ・カーマイケル | |
マーク・ゲイティス |
コメント