映画【軍中楽園】感想(ネタバレ):台湾の新兵訓練と慰安所を舞台に描く群像劇

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●こんなお話

 中国にめちゃ近い金門島で主人公が慰安所に配属されて、そこで働く慰安婦ややってくる軍人さんたちの話。

●感想

 映画の序盤は、新兵訓練もののジャンルとして描かれており、教練シーンや対岸の中国側からのマンネリ化した砲撃が登場します。この部分は当時の台湾の緊迫した状況を感じさせつつも、どこかユーモラスで軽快に楽しめるものでした。観る側は台湾の歴史的背景を知りつつ、その時代の緊張感を体感できます。

 物語の大部分は政府公認の慰安所を舞台に展開され、そこで親しくなるヒロインの過去が徐々に明かされていきます。いじめに遭う主人公の友人や先輩の鬼教官など、さまざまなキャラクターが登場し、それぞれの物語が群像劇としてゆったりと紡がれていきます。そのため、130分という上映時間はやや長く感じられるかもしれませんが、台湾の美しい風景と相まって、ゆったりと落ち着いて鑑賞できる作品となっています。

 鬼教官は外省人として描かれており、中国大陸で国民党軍に拉致された後、台湾に渡ってきたという過去が語られます。彼が本土にいる母親に会いたいという切実な願いを抱えていることや、兵役の意義に疑問を持つ内省人たちが国共内戦に巻き込まれていく姿も、丁寧に描かれています。こうした描写は台湾の複雑な民族的・政治的背景を理解するうえで非常に興味深いものでした。

 さらに、慰安所で働く慰安婦たちも生き生きと描かれており、彼女たちがそこで実際に生活し、苦悩や喜びを感じていた様子が伝わってきます。彼女たちの存在感が物語にリアリティを与え、作品全体の深みを増しています。

 ただひとつ残念だったのは、外国人視点で見ると台湾特有の多言語環境や文化的ニュアンスがわかりにくい部分があったことです。言語の壁や細かい文化的背景を知らないと、台湾らしさを十分に味わうのが難しいため、その点はもう少し工夫がほしかったと感じました。

 全体として、台湾の歴史や人々の暮らしを丁寧に描きつつ、キャラクターの内面にも寄り添った作品で、のんびりとした時間の中で鑑賞できる映画でした。こうした作品は台湾の複雑な歴史を知るきっかけとしても貴重な存在だと思います。

☆☆☆

監督ニウ・チェンザー 
脚本ニウ・チェンザー
出演 イーサン・ルアン 
レジーナ・ワン 
チェン・ジェンビン 
チェン・イーハン 

コメント

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