映画【キカイダー REBOOT】感想(ネタバレ):良心回路が暴走する近未来SF

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●こんなお話

 アンドロイドのジローことキカイダーは自分を作った博士の娘さんたちを護衛するけど、人間の心とは? なぜ生きるのか? 何のために戦うのかを悩み続ける100分間の話。

●感想

 近未来の日本では、介護、医療、災害救助といった危険な現場を支援するため、国家主導のロボット開発計画「ARKプロジェクト」が進められていた。しかしその裏側では、アンドロイドを軍事兵器として転用する計画も同時進行していた。プロジェクト主任研究員だった光明寺信彦は、人間に従うだけではなく、自ら善悪を判断する“良心回路”を搭載したロボット開発を進めていたが、軍事利用を推進する国防大臣・椿谷と激しく対立する。そして研究施設で起きた事故によって命を落とす。

 それから一年後。娘のミツコと弟のマサルは父を失ったまま二人きりで生活していた。そんなある夜、武装した部隊が突然マンションへ突入し、姉弟を拉致しようとする。逃げ場を失い屋上へ追い詰められた瞬間、一人の青年が現れる。彼こそ光明寺が極秘に完成させていたアンドロイド・ジローだった。

 ジローは普段は人間そのものの姿をしているが、戦闘になると赤と青に分かれた異形の戦士・キカイダーへ変身する。敵部隊は大型戦闘ロボットまで投入するが、ジローは圧倒的な戦闘能力で撃破する。戦いを終えたジローは、自分が光明寺博士に造られ、ミツコとマサルを守る使命を与えられていると説明する。しかし突然現れた機械人間をミツコは信用できず、強い警戒心を向ける。

 現場にはフリージャーナリストの服部半平も居合わせており、逃亡中の三人を匿うことになる。ミツコは父の恩師である心理学者・前野究治郎なら真相を知っているかもしれないと考え、彼のもとへ向かおうとする。しかし携帯電話の通信を追跡され、再び追っ手が現れる。そのたびにジローは敵と激突し、ミツコたちを守り続ける。

 旅を続ける中で、マサルは無表情ながら不器用に人間を理解しようとするジローへ少しずつ心を開いていく。食事の意味も感情表現も理解できないジローだったが、次第に怒りや迷い、悲しみのような感情を見せ始める。ミツコもまた、機械であるはずのジローが人間以上に苦悩している姿を見て、徐々に態度を変えていく。

 その頃、椿谷大臣は執拗に姉弟を追っていた。目的は、光明寺が死の直前に隠した研究データ「光明寺ファイル」。そのデータはマサルの体内に秘匿されていた。椿谷はARKプロジェクト技術責任者ギルバート神崎へ研究完成を命じ、さらにジロー抹殺のため新型アンドロイドを投入する。

 神崎が開発した女性型アンドロイド・マリは、ジローを凌駕する戦闘能力を持っていた。再三の襲撃の末、マリはジローを徹底的に叩きのめし、破壊寸前まで追い詰める。ミツコは必死に「もうやめて」と叫び、ジローを助ける代わりに自分が従うと申し出る。マリはミツコを連れ去り、敗北したジローは山中を放浪する。

 傷ついたジローは、自分が人間を守れなかったことに苦しみ続ける。前野や服部はそんなジローを保護し、修理を施す。ジローは機械でありながら、自分の存在理由や人間らしさについて悩み始める。

 一方、光明寺ファイルを入手した椿谷は、軍事ロボット計画を完成させようとしていた。しかし神崎は、自らの研究が光明寺に劣っていると判断されたことに強い劣等感を抱いていた。彼は人間としての肉体を捨て、自らの脳を戦闘用アンドロイドへ移植するという狂気の決断を下す。そして最強兵器ハカイダーとして生まれ変わる。

 終盤、ジローは軍事施設へ突入し、ハカイダーと激突する。互いに激しい攻撃を繰り返す中で、ジローは人間を守るために戦う意思を固める。そして良心回路のリミッターを解除し、暴走寸前の力を解放する。圧倒的な力を得たジローはハカイダーとの死闘を制し、軍事計画を阻止しておしまい。


 冒頭からキカイダーのアクションシーンが凄まじく、とにかく映像の勢いに圧倒されました。ネオンが輝く近未来都市の空撮や、暗闇の中で光るキカイダーのデザインなど、ビジュアル面はかなり気合いが入っています。低予算寄りの邦画SFアクションでありながら、巨大ロボットとの戦闘も安っぽく見えず、CGとスーツアクションを組み合わせた映像づくりはかなり頑張っていた印象でした。

 特にキカイダーの戦闘シーンはスピード感があり、ジャンプ、格闘、ワイヤーアクションを惜しみなく投入していて非常にカッコいいです。アクションチームやスタントチームの熱量がかなり伝わってきましたし、「とにかくヒーローを格好良く見せたい」という気迫が全編から漂っていました。

 序盤の展開もかなり良かったです。軍事利用を巡る研究者同士の対立があり、その果てに博士が死亡。そして残された姉弟が謎の武装集団に追われ、そこへキカイダーが現れて救出する。ここまでの流れは非常にテンポが良く、逃避行SFとしてワクワクさせられました。キカイダーのビジュアルもスタイリッシュで、「これは面白くなりそうだ」と期待させる導入になっています。

 ただ、中盤以降はかなり独特なテンポになります。追われているはずなのに、急に海辺で焚き火を囲みながら会話を始めたり、世界観の危機感が急に薄れる場面が多く、観ていて戸惑いました。そもそもミツコたちがジローに対して深く疑問を抱かず、一緒に行動し続ける流れも少し不自然ですし、追っ手側の説明も不足しているため、「今なぜこうなっているのか」がわかりづらい部分も多かったです。

 そして物語は次第に、「人間とは何か」「完全とは何か」「心とは何か」といった哲学的テーマへ寄っていきます。ジローだけでなく、ミツコや悪役側まで延々と悩み始めるため、アクション映画としての勢いが止まりがちでした。悪役側も長々と思想を語るわりに、実際にやっていることは小規模で、ドラマのスケール感がやや噛み合っていない印象があります。

 特に終盤は、悩む主人公、悩むヒロイン、自分語りを続ける悪役たち、それを説明するジャーナリストという構図が延々続き、「今何を見せられているんだろう」と感じる瞬間もありました。ヒーロー映画としての爽快感を期待すると、かなり重苦しい空気に驚くと思います。

 映像面では、全体的に暗めの画づくりも気になりました。ナイトシーンが多く、スタジオ撮影もかなり暗いため、せっかくの激しいアクションが見えづらい場面があります。キカイダーのデザイン自体は非常にカッコいいだけに、もっと明るい画面で見たかった気持ちもありました。

 それでも、ギターを抱えながら廃墟に立つキカイダーの姿など、妙にシュールで忘れられない場面も多く、独特な味わいがあります。真面目に作っているのか、どこか笑わせにきているのか判別できない空気感も含めて、不思議な魅力を持った作品でした。

 クライマックスでは、良心回路を解除してパワーアップする展開が用意されていますが、そこも感情的な盛り上がりより無機質さが勝っていて、熱血ヒーロー物としては少し物足りなさがあります。逆に、終始どこか孤独で、人間になりきれない機械として描かれるジローには独自の哀愁がありました。

 劇中でマサルが「お姉ちゃんが何で悩んでるのかわからないよ!」と言う場面がありますが、あの台詞は観客の気持ちを代弁しているようで妙に印象に残ります。ストーリーはかなり説明不足な部分もありますが、その混沌とした空気も含めて、この映画らしさなのかもしれません。

 そしてエンドロールで流れるオリジナル版『人造人間キカイダー』のスチール写真を見ていると、「昔の作品って相当面白かったんだろうな」と思わされるのも不思議でした。新作映画を観終わったあとに、原作や旧作への興味が強くなるタイプの作品だったと思います。

鑑賞日: 2014/05/24 新宿ミラノ座 2026/05/26 U-NEXT

監督下山天 
脚本下山健人 
原作石ノ森章太郎 
出演入江甚儀 
佐津川愛美 
高橋メアリージュン 
伴大介 
長嶋一茂 
本田博太郎 
原田龍二 
中村育二 
山中聡 
石橋蓮司 
鶴見辰吾 
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