●こんなお話
海炭市に住む人たちの短編の話。
●感想
全部で5つのオムニバスで海炭市という地方都市に住む人々を描いていました。
1つ目のエピソードは、造船所で働く若者とその妹の話で。造船所は不景気により大量解雇をする。尊敬する先輩が組合として会社と戦ってくれると思ってたら、あっさりと退職金の割り増しで妥結してしまう。「お金じゃねえんだよ!」と詰め寄る兄。金のために働いてるのではない主人公の気持ちは、とても理解できるものでした。それはオープニングで、嬉しそうに船の出航を見守る姿からお金ではなく船が全てと働く姿から想像できます。
妹と大晦日、年越しそばを食べるだけで悲しい気持ちになっていきました。そして、初日の出を観にいくことになり。そこで見る初日の出の美しいこと。この2人にはどんな未来が待ち受けているのか? 兄の表情と妹の表情の違いからも受けとることができました。その帰り道、兄はお金がないので妹だけロープウェイに乗せ自分は歩いて降りるという。しかし、兄をいくら待っても戻ってこない。こんなに救いのない展開ってのが辛すぎます。兄がどうなったのかは、その後のエピソードで垣間見れることになります。
2つめのエピソードは、1人の老婆が立ち退きを迫られる話で。家にはネコやヤギと一緒に生活しているのをひたすら映し出します。説得にくる職員に対して「来年も再来年もそのまた先も、俺はここで生き続けるんだ」と語る姿は、世の中が変わっても自分だけは変わらないということを語っているのだと思いました。
3つめのエピソードは、プラネタリウムで働く男とその妻、そして口も聞いてくれない息子の家族の話で。奥さんは、水商売をしていて帰りも遅く息子も口を聞いてくれない。孤独の男の話で、孤独ゆえに疑心暗鬼になる姿は共感できるもので。奥さんが不倫しているのではないかと疑い、職場にまで行こうとする。そんなことしたら、余計にダメなことはわかっているのにそうしなければいけないという気持ち。めっちゃわかるわ。と共感しながら見てまいした。
4つめのエピソードは、小さなプロパンガス屋の社長が主人公で。再婚相手の女性に対して常にイライラしている様子。しかも不倫まで。再婚相手は、主人公の連れ子である子どもに自分のイライラをぶつけて暴力を振るう。
何故、こんなにもみんなイライラしているのか。自分と周りを比べてしまい、周りは楽しそうにしているのに自分は小さな会社の社長、しかもそれも上手くいかない。そのためにイライラしているのだと思います。こういった現実にイライラする気持ちも理解できます。にしても、子どもに暴力を振るうのを見ているのは辛いものがありました。
5つめのエピソードは浄水器を売るセールスマンの話。彼の父親は路面電車の運転士で、毎日毎日同じことの繰り返しでセールスマンの息子と全く方向の違う職業でした。ただ、それが悪いということでなく違うというだけ。
息子がスナックのお姉さんに誘われて行ってみると、THE地方のスナックといった感じでお姉さん達の雰囲気が最高で笑ってしまいました。
父親と上手くいっていないことを語る息子でしたが、お墓参りの帰りに偶然会ったバスでの会話を聞くと短い会話ですが。ちょっとした変化があったことがわかります。
それぞれのエピソードは繋がりはなく独立していますが、それぞれテレビとかで同じのが流れていて同じ場所で生きる人たちの話だとわかります。
最後の最後にそれぞれの人生が一瞬ですが重なったときは、ちょっと感動でした。生きることの寒さが伝わる映画でした。
☆☆☆☆
鑑賞日:2012/05/24 DVD
監督 | 熊切和嘉 |
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脚本 | 宇治田隆史 |
原作 | 佐藤泰志 |
出演 | 谷村美月 |
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竹原ピストル | |
加瀬亮 | |
三浦誠己 | |
山中崇 | |
南果歩 | |
小林薫 | |
大森立嗣 | |
あがた森魚 | |
伊藤裕子 | |
村上淳 | |
中里あき | |
東野智美 | |
小山燿 | |
西堀滋樹 | |
黒沼弘巳 | |
森谷文子 |