●こんなお話
女性警官がバディとなって事件を解決していく話。
●感想
刑事ドラマというジャンルにおいて、複数の登場人物がそれぞれの部署で捜査を展開していく構成は、群像劇的な味わいを醸し出す可能性を秘めています。本作も、二人の女性刑事が異なる場所からそれぞれの事件に向き合っていくという導入で始まっていきます。ひとりは強行犯係、もうひとりは公安という立場で、それぞれの任務に取り組みますが、最初の数話では全体の流れがやや散漫で、物語の芯が見えにくい印象を受けました。
ドラマが進行していく中盤では、黒木メイサさんが演じる刑事の過去が明かされる場面もあり、彼女の背景が丁寧に描かれていくのですが、事件そのものとの関係がやや希薄に感じられました。多部未華子さん演じるもうひとりの刑事も、捜査のなかで人間関係の描写が多めで、特に上司との距離感を描くシーンが頻繁に挟まれていきます。ただ、交渉術に長けた設定のキャラクターであるにもかかわらず、その強みが存分に発揮される場面が少なかったのは、やや惜しかったように思います。
終盤に近づくにつれて物語の方向性が大きく変化していき、謎めいた「新世界秩序」と名乗る組織が登場します。彼らの動機や背景にもう少し厚みがあれば違った印象になったかもしれませんが、ピエロの仮装をした人物が現れたりと、現実感からやや乖離した演出も多く、世界観として馴染みにくい部分も見受けられました。
アクションに関しては、刑事ものとしての見せ場を意識した構成になっていたとは思いますが、緊張感の持続やカット割りに工夫が少なく、印象に残る場面があまりなかったのが率直な感想です。特に「ジウ」と名乗るキャラクターに関しては、真っ白な衣装に金髪という出で立ちで登場し、あまりに象徴的な存在として浮いてしまっていたように感じました。ナイフを構えるシーンや奇行めいた描写が多く、ミステリアスさの演出とは別の方向に作用していたのではないかと考えてしまいます。
物語全体としては、女性刑事たちの成長や信念にもっと寄り添った構成であれば、観る側の感情ももう少し自然に移入できたかもしれません。いくつもの要素が交錯する構造ではありましたが、それぞれの軸が十分に融合していかない印象が強く残りました。ドラマとしての到達点がどこにあるのかを見極めるのがやや難しかったというのが、鑑賞を終えて感じた率直な印象です。
☆
鑑賞日:2011/09/28 テレビ朝日
監督 | 片山修 |
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原作 | 誉田哲也 |
脚本 | 菱田シンヤ |
出演 | 黒木メイサ |
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多部未華子 | |
北村有起哉 | |
城田優 | |
エル | |
矢島健一 | |
野間口徹 | |
宮川一朗太 | |
石丸謙二郎 |