映画【イングロリアス・バスターズ】感想(ネタバレ):多言語が交錯する戦争映画

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●こんなお話

 ナチスを皆殺しにしようとする西側サイドと多言語を操るナチスの大佐の攻防の話。

詳細ネタバレあらすじ

 1941年、ナチス・ドイツ占領下のフランス。フランスの農家ペリエ・ラパディットの家に、親衛隊のハンス・ランダ大佐が部下を連れてやって来る。ランダは行方不明になっているユダヤ人のドレフュス一家についてラパディットに質問する。ランダはフランス語と英語を使い分けながら、ドレフュス一家を匿っているかを尋ねる。ラパディットは当初否定するが、最終的に床下にドレフュス一家5人を匿っていることを認める。ランダは隠れている場所を確認すると、部下に床板へ向けて銃を撃たせる。床下にいたドレフュス一家は射殺され、ショシャナ・ドレフュスだけが建物から逃げ出す。ランダは逃げるショシャナに銃を向けるが、発砲せずに逃がす。

 1944年、パリ。ショシャナはエマニュエル・ミミューという名前を使い、映画館を経営している。そこへドイツ兵フレデリック・ゾラーが現れる。ゾラーは北アフリカで多数の敵兵を狙撃したことでドイツ軍の英雄となっており、その戦績を題材にしたナチスの宣伝映画『国家の誇り』では本人役を演じている。ゾラーはショシャナの映画館で作品のプレミア上映を行うことをヨーゼフ・ゲッベルスに提案し、ゲッベルスはその案を受け入れる。

 プレミア上映にはゲッベルスをはじめとするナチス幹部が集まり、アドルフ・ヒトラーも出席することになる。警備責任者にはランダが指名される。ランダはショシャナと会い、映画館について質問するほか、映写を担当するマルセルについても尋ねる。

 ショシャナはマルセルとともに、映画館に保管されている可燃性の高いフィルムを使って映画館を焼く計画を立てる。さらにショシャナ自身を撮影した映像を作り、上映作品に組み込む準備を進める。

 一方、アメリカ軍ではアルド・レイン中尉がユダヤ系アメリカ兵を集め、「バスターズ」と呼ばれる部隊を組織している。メンバーにはドニー・ドノウィッツ、スミスソン・ユティヴィッチ、オマー・ウルマー、ヒューゴ・スティーグリッツ、ヴィルヘルム・ヴィッキらがいる。バスターズはフランス国内でドイツ兵を捕らえ、軍事情報を聞き出したあとに殺害する。生存したドイツ兵には、ナチスの鉤十字を額に刻む。

 イギリス側でも、プレミア上映を利用してナチス幹部を暗殺する「オペレーション・キノ」が計画される。元映画評論家のイギリス軍中尉アーチー・ヒコックスが作戦に参加し、ドイツ人女優で連合国側のスパイでもあるブリジット・フォン・ハマーシュマルクと合流する。ヒコックスにはバスターズのスティーグリッツとヴィッキが同行することになり、3人はドイツ軍人に偽装してハマーシュマルクとともに作戦を進める。

 ヒコックス、スティーグリッツ、ヴィッキはフランスの酒場「ラ・ルイジアーヌ」でハマーシュマルクと合流する。しかし酒場には多数のドイツ兵がおり、ドイツ軍のヘルシュトローム少佐もその場にいる。ヘルシュトロームはヒコックスのドイツ語の発音に気づき、さらにヒコックスが酒を3杯注文した際に出した指の形から、彼らがドイツ人ではないことを見抜く。ドイツ人が「3」を示すときとは異なる指の出し方だったため、ヒコックスたちの正体が露見する。

 ヒコックスとヘルシュトロームが銃を向け合ったことで銃撃戦が始まり、酒場にいたドイツ兵たちも加わる。ヒコックス、スティーグリッツ、ヴィッキが死亡し、ハマーシュマルクは脚を撃たれて負傷する。酒場の事件を調べたランダは、現場からハマーシュマルクの靴と、彼女のサインが入ったハンカチを発見する。

 ハマーシュマルクはレインたちと合流し、プレミア上映の計画を説明する。ヒトラーも出席することが判明したため、レインたちは作戦を続ける。レイン、ドノウィッツ、ウルマーはイタリア人の映画関係者を装い、ハマーシュマルクとともにプレミア上映へ向かう。

 映画館でランダはレインたちと会い、イタリア語で自己紹介させる。レインたちはその場を通過するが、ランダはハマーシュマルクを別室へ連れていく。ランダは酒場で発見した靴をハマーシュマルクに履かせ、同じ靴であることを確認して、ランダはハマーシュマルクを殺害し、レインとユティヴィッチを拘束する。ドノウィッツとウルマーは映画館内に残される。

 ランダはレインに、自分が連合国側へ投降する代わりに、今回の作戦を成立させる取引を持ちかける。レインはアメリカ側へ連絡し、ランダの投降について交渉が行われる。ランダは自分の戦後の身分や待遇などについて条件を提示し、その条件で取引が成立する。

 そのころ映画館では『国家の誇り』の上映が始まっている。上映中、ゾラーは客席を離れて映写室へ向かい、ショシャナと会う。ショシャナは計画がばれるまえにゾラーを銃撃するが、反撃されて双方が死亡する。

 『国家の誇り』の上映が終盤に入ると、ショシャナが用意した映像がスクリーンに映し出される。そこにはショシャナの顔が映り、観客に向けて自分がユダヤ人であることを伝える。マルセルはスクリーンの裏に積んだフィルムへ火をつけ、映画館を燃やす。観客がいる客席も閉鎖される。

 同時に、映画館内に残っていたドノウィッツとウルマーはヒトラーとゲッベルスがいる特別席へ向かう。2人はヒトラーとゲッベルスを機関銃で射殺し、その後も客席へ向けて銃を撃つ。2人が身につけていた爆発物が爆発し、ドノウィッツとウルマー、映画館内にいたナチス関係者らが死亡する。映画館も破壊される。

 一方、ランダはレインとユティヴィッチを連れて連合軍側へ向かう。ランダは自分の投降を成立させるための無線担当兵とともに移動し、連合軍側へ到着する。そこでレインは無線担当兵を射殺する。ランダは交渉で得た条件を確認するが、レインとユティヴィッチはランダの額にナイフで鉤十字を刻む。レインはその傷を自分の「最高傑作」だと語っておしまい。

●感想

 ヨーロッパが舞台になっていることもあり、登場人物たちがそれぞれの言語で会話するところが大きな特徴になっていました。フランス語、ドイツ語、英語、イタリア語が場面ごとに使い分けられ、単純に何を話しているのかだけではなく、「その人物がその言語を話せるのか」「どこまで相手の言葉を理解しているのか」という部分まで会話の駆け引きになっています。

 そのため、銃を撃ち合う場面以上に、言葉のやり取りを見ている時間が面白かったです。特にランダ大佐は、フランス語、英語、イタリア語などを使い分けながら相手に質問を重ねていきます。相手の返答だけではなく、発音や言葉の選び方、仕草まで確認しながら話を進めていくので、ランダが登場する場面は会話そのものがサスペンスになっていて面白かったです。

 個人的には、このランダ大佐の存在感がかなり大きかったです。画面に登場すると、何を質問するのか、相手がどう答えるのか、その会話から何が判明するのかという流れを追うだけでも楽しめます。特に終盤のハマーシュマルクとのやり取りでは、酒場で見つけた靴を使って彼女との関係を確認していくため、銃撃戦とは違う形で話が進んでいきます。クリストフ・ヴァルツの演技も含めて、ランダ大佐が作品全体を引っ張っている印象が強かったです。

 一方で、タイトルにもなっている「イングロリアス・バスターズ」のメンバーについては、人数が多く、それぞれの人物をしっかり覚える前に物語が進んでいくため、個人的にはキャラクターの魅力をつかみにくかったです。ナチス兵を捕らえたり、情報を聞き出したり、額に鉤十字を刻んだりと印象的な行動はありますが、メンバーそれぞれの顔や名前を覚えるところまではいきませんでした。

 そのため、バスターズがナチス兵を襲撃する場面や、終盤でドノウィッツとウルマーがヒトラーとゲッベルスを狙う場面も、出来事としては大きいのですが、キャラクターに対する思い入れがそこまで強くならないまま進んでしまいました。タイトルから想像するような、バスターズを中心としたアクション映画として見ると、少し印象が違います。

 ショシャナのエピソードについても、ゾラーとの関係が個人的には少し分かりにくかったです。ゾラーはショシャナに近づき、彼女の映画館でプレミア上映を行う流れを作りますが、2人の関係が恋愛として大きく発展するわけではありません。ショシャナがゾラーに対してどのような気持ちの変化をしているのかを追いかけるというより、2人の関係が最終的な事件へつながっていく構成になっています。

 また、タランティーノ作品らしく、会話の場面が長く続くところも特徴です。1つのシークエンス自体は区切られていても、その中で登場人物同士がかなり長く話します。特にイギリス軍のヒコックスたちがドイツ軍人を装い、ハマーシュマルクと地下のバーで会う場面は、正体がばれるかどうかというサスペンスがあります。

 この場面は、指の出し方という小さな違いから正体が露見していくところが面白いです。ただ、そこに至るまでのドイツ軍人との会話が長いため、個人的には少し長く感じました。言葉や仕草を利用して正体を探る場面なので、作品の特徴がよく出ている一方で、アクションを期待して見るとテンポの違いを感じるところでもあります。

 クライマックスの映画館での計画も、ショシャナとバスターズがそれぞれ別の計画を進めている構成になっています。どちらも同じプレミア上映を狙っているものの、最初から最後まで一つの作戦として合流するわけではありません。ショシャナ側はフィルムと映像を使い、バスターズ側は爆発物を使ってナチス幹部を狙います。

 そのため、終盤に複数の計画が同時進行するわりには、それぞれの計画が一つにつながって大きなアクションになるという構成ではありませんでした。個人的には、そこが少し物足りなく感じました。ただし、史実とは異なる展開を組み立て、映画館という場所でナチス政権の幹部たちを一気に狙うという発想自体は、この作品ならではだと思います。

 それでも、いろいろな言語を使う人物たちが同じ場所に集まり、その言葉を理解できるかどうかが、そのまま相手の正体を見抜く材料になっているところはかなり楽しめました。銃撃戦だけではなく、言葉、発音、指の形、靴といった小さな手掛かりから状況が動いていくため、会話を中心としたサスペンスとして見ると印象に残る作品でした。

☆☆☆☆

鑑賞日: 2011/05/27 Blu-ray 2018/10/31 Netflix 2026/09/20 U-NEXT

監督クエンティン・タランティーノ 
脚本クエンティン・タランティーノ 
出演ブラッド・ピット 
メラニー・ロラン 
クリストフ・ヴァルツ 
イーライ・ロス 
ミヒャエル・ファスベンダー 
ダイアン・クルーガー 
ダニエル・ブリュール 
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