●こんなお話
よど号ハイジャック事件の話。
●感想
1970年、日本の旅客機が武装した若者グループによってハイジャックされ、リーダーの伝次は機内の乗客と乗員100人以上を人質に取り「北朝鮮の平壌へ向かえ」と機長に命令する。機長は燃料や航路の問題を抱えながらも要求に従い飛行を続け、機内では緊張状態が続く。
一方、韓国ではこの事態を外交的に利用しようとする政府の思惑が動き出し、日本政府よりも先に事件解決を主導することで国際的な主導権を握ろうとする。しかし正規の外交ルートでは介入できないため、裏社会とも繋がる謎の男アムゲを中心に極秘チームが結成され、空軍の若い管制官ソ・ゴミョンやKCIA幹部パク・サンヒョンが作戦に参加する。
彼らが立案したのは、北朝鮮を装ってハイジャック機を韓国へ誘導するという偽装作戦であり、無線交信、滑走路の灯火、空港設備まですべてを平壌に見せかける準備が進められる。管制チームは北朝鮮の話し方や通信手順を徹底的に模倣しながら交信を開始するが、ハイジャック犯たちは警戒を強め、機内では乗客への威圧や内部の緊張が高まっていく。
同時に日本政府も独自に対応を進めており、外交交渉や情報戦が水面下で進行し、現場の判断は政治的配慮によって揺れ動く。韓国側では北朝鮮の本物の通信が入る可能性との時間勝負となり、どちらが先にハイジャック機と接触するかという緊迫した状況が続く。
やがて韓国側の偽装交信が成功し、ハイジャック機は平壌に到着したと信じ込まされて韓国・金浦空港へ着陸する。しかし地上に降りた犯人たちは、周囲に見えるアメリカ軍機や外国人の存在、ラジオから流れる音楽への違和感から徐々に疑念を抱き始める。さらに北朝鮮兵を装った人物への質問の中で矛盾が露呈し、偽装が見破られる。
状況は再び緊迫し、犯人グループは爆弾の存在を示しながら要求をエスカレートさせる。日本政府関係者も現地に到着し、韓国側は外交的優位を保とうとする一方で、現場では人質の安全確保が最優先課題となる。時間が経過する中で爆発のタイムリミットが迫り、最終的に日本の政務次官が自ら人質の身代わりとなる決断を下す。
犯人たちはその交換条件を受け入れ、政務次官を乗せたまま北朝鮮へ向けて再び離陸し、その他の乗客と乗員は解放される。事件は国家間の駆け引きと現場の判断が複雑に絡み合う形で決着し、関係者たちはそれぞれの立場で結果を受け止めることになっておしまい。
実在のハイジャック事件をベースにしながら、国家間の思惑と現場の緊張を同時に描いていく構成が非常に見応えのある作品でした。序盤から中盤にかけては、ハイジャックという極限状況と、それを巡る日本と韓国の駆け引きがスピード感たっぷりに展開され、途切れることなく緊張感が持続していきます。
特に、北朝鮮になりすまして航空機を誘導するという大胆な作戦は、通信のやり取りや演出の細部まで丁寧に描かれており、現場の緊迫した空気がしっかり伝わってきました。映画撮影スタッフの協力まで動員して空港を偽装する流れもユニークで、エンターテインメントとしての面白さが際立っています。
一方で、事件が着陸後に膠着状態へ入ってからは、ハイジャックものとしてのスリルがやや落ち着き、物語の焦点が政治的な駆け引きへと移行していきます。そのため、序盤の勢いと比べると展開の方向性が見えにくくなり、やや間延びした印象を受ける部分もありました。
それでも、国家の体面や思惑に振り回される現場の人間たちの姿などから最終的には単なるサスペンスにとどまらない余韻を残します。スピード感と政治ドラマの両面を楽しめる作品として、印象に残る一本でした。
☆☆☆
鑑賞日:2026/03/28 NETFLIX
| 監督 | ピョン・ソンヒョン |
|---|---|
| 脚本 | ピョン・ソンヒョン |
| 出演 | ソル・ギョング |
|---|---|
| ホン・ギョン | |
| リュ・スンボム | |
| 山田孝之 | |
| 椎名桔平 | |
| キム・ソンオ | |
| 笠松将 | |
| 山本奈衣瑠 |

