映画【GF*BF】感想(ネタバレ):青春と政治に揺れる台湾映画

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●こんなお話

 1985年から2012年までの激動の台湾の政治事情の中で、高校生から大人になっていく3人の男女がじゃんけんのごとく片思いの矢印が向き合っていく話。

●感想

 物語は2012年、台湾の学校で双子の女子学生が「スカートではなく短パンを履かせてほしい」と訴える運動をしている場面から始まる。彼女たちの保護者は書類上は「兄」とされているが、彼女たちは彼を「お父さん」と呼んでいた。その男性の回想をきっかけに、物語は1985年の戒厳令下の台湾へと遡り、若者たちの青春が描かれていく。

 当時の主人公たちは、踊ることで自由を表現して。教師に対して「1人で踊れば抗議になるが、みんなで踊れば民意になる」と語りかけ、仲間と共に音楽とダンスを通じて理不尽な時代に立ち向かう。彼らの姿は生命力にあふれ、観ているこちらまで胸が高鳴るような鮮やかさに満ちている。

 時は流れ、5年後。大学生となった彼らは民主化運動に参加し、国の未来を変えるべく活動に身を投じる。政治的な自由を手にする一方で、心の束縛が解けた彼らは、それぞれの感情を抑えきれず、互いの関係も揺らぎ始めていく。

 特に興味深いのは、よくある三角関係の物語とは一線を画している点だと思います。誰かが誰かを奪い合うのではなく、むしろ仲良く語らう2人を遠くからもう1人が見つめている構図が繰り返し描かれいて、そこには独特の切なさがあり、3人の関係性をさらに複雑にしていく秘密の存在も物語に深みを与えていると思いました。

 彼らの間に流れる微妙な距離感や感情のすれ違いは観る側にも痛いほど伝わってきて、友人たちと共に過ごす時間の中で、自分だけが置き去りにされているような感覚は、胸が締め付けられるほどリアルに表現されていました。

 ただ、個人的にヒロインが不倫関係にある描写には戸惑いを覚えた部分もありました。しかし、その葛藤があるからこそ、高校時代の無邪気でまぶしい日々がより一層強く心に残り、過ぎ去った時間の尊さが際立っていたように思います。

 二度と戻れない青春の光と影。誰もが心の奥に持っている儚い記憶を呼び起こさせる物語であり、台湾の時代背景と若者たちの葛藤が重なり合うことで、普遍的なテーマを描き出していると思いました。観終わった後には、自分自身のかつての青春を思い返さずにはいられない余韻が残る一作でした。

☆☆☆☆

鑑賞日: 2014/06/15 シネマート六本木  2017/08/11 NETFLIX 2025/09/06 DVD

監督ヤン・ヤーチェ 
脚本ヤン・ヤーチェ
出演グイ・ルンメイ 
ジョセフ・チャン 
リディアン・ボーン 
チャン・シューハオ 
ティン・ニン 
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