●こんなお話
詐欺師軍団のリーダーと彼に弟子入りしたヒロインが好き好きな関係になりながら、詐欺をして豪勢に暮らしていく話。
●感想
未来的な都市の風景を背景に、冒頭からスタイリッシュな映像美が広がる。衣装や小道具、建築や照明の細部にいたるまで、近未来的なセンスが行き渡っており、それだけで目を引く魅力がある作品だった。
物語は、主人公がある高級レストランの予約を試みる場面から静かに始まる。しかし電話ではあっさりと断られてしまう。その直後、別の携帯電話を取り出して再度かけ直すと、なぜか予約が取れてしまう。次のシーンではもう店内で食事を楽しんでおり、その予約のトリックがさりげなく明かされていく。こうした導入から、主人公がただ者ではないことがうかがえる。
街角でスリをしていたヒロインと出会い、彼女は主人公の“技”に惚れ込み、弟子入りを志願する。やがて明らかになるのは、主人公が祖父の代から続く詐欺グループのリーダーであるという事実。彼のチームは、イベント会場などに紛れ込み、集団で詐欺を仕掛けていくという前代未聞の組織であった。
序盤のチームでの連携プレーによるスリや、観衆を巻き込んだ小技の数々は、不道徳であることには変わりないのですが、それを忘れてしまうほど演出にスピード感があり、エンターテインメントとして楽しめる魅力があったように思います。
中盤ではアメフトの試合会場に舞台を移し、中国人の富豪とのささいな賭けから、状況がどんどんエスカレートしていく。その賭けの行方がかなり長めに描かれるのですが、演出としてのテンポや緊張感の持続はしっかりしており、見ごたえはありました。
この手の詐欺モノ、いわゆる“コンゲーム映画”の醍醐味は、終盤に用意されたどんでん返しにあります。観客が「してやられた!」と感じたときに初めて、その詐欺の構図に納得し、再鑑賞したくなるような仕掛けがあったりします。ただ、本作においてはその種明かしが、少々「それアリなのか?」と感じるほどの無理があるように見えてしまいました。
たとえば、賭けの勝敗が60%の成功率で成り立つと言っていたり、失敗したら別の手を用意しているというセリフがあったりと、理屈では理解できても、完全に納得しきれないもどかしさが残ったように思います。フィクションとして楽しめばよいのだと思いつつ、頭のどこかで「そんなに都合よくいくのか」と思ってしまったのも正直なところです。
物語後半は、ガラッと雰囲気を変えてカーレースの世界が舞台となります。主人公は、敵チームに偽のソフトウェアを売り込むというスパイ的な仕事を引き受け、再び勝負の場に身を置いていきます。そこでは、ヒロインとのやり取りも増え、彼女の言葉や行動が“演技なのか本気なのか”を観客自身が探りながら観ていく展開が続き、物語の緊張感を引き締めていたように感じました。
クライマックスでは、主人公の計略が思い通りに進行し、そこからさらに新たなどんでん返しが用意されていました。序盤に交わされた何気ない会話が伏線となって後半に生きてくる構成は、非常に気持ちよく、映画としての完成度を高めていたと思います。
とはいえ、展開自体はそれほど目新しいわけでもなく、恋愛要素についてもあまり惹かれるものがあるとは感じにくい部分もありました。ヒロインとの関係性がもっとドラマチックに深掘りされていれば、物語全体にもう少し深みが加わったのではと個人的には思います。
それでも、ラストで流れるあの名曲「華麗なる賭け」のテーマが、すべての場面を彩ってくれて、観終わった後には不思議と気分が高揚する作品となっていたのではないかと感じました。詐欺の世界を描いた物語でありながら、派手で華やかな映像、軽妙なセリフ回し、テンポの良さが合わさって、まさに“エンターテインメントとしての快作”という印象でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2015/05/14 イオンシネマ多摩センター
監督 | グレン・フィカーラ |
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ジョン・レクア | |
脚本 | グレン・フィカーラ |
ジョン・レクア |
出演 | ウィル・スミス |
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マーゴット・ロビー | |
ロドリゴ・サントロ | |
ジェラルド・マクレイニー | |
アドリアン・マルティネス | |
ロバート・テイラー | |
B・D・ウォン |
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