●こんなお話
今度はロンドンでポルターガイスト現象に悩む家族を救おうとする霊媒師夫婦の話。
●感想
1977年、ロンドン北部エンフィールド。4人の子どもを育てるシングルマザー、ペギー・ホジソンの家では、次女ジャネットの周囲で奇妙な出来事が起こり始めていた。家具が勝手に動き、壁を叩く音が夜ごと響く。最初はいたずらかと思われたが、やがてジャネット自身の声が老人のように変わり、家族の前で暴れ出す。彼女は「ビル・ウィルキンズ」という老人の霊に取り憑かれたと言い出し、警察もお手上げで、母ペギーは恐怖のあまり教会に助けを求める。
その頃、心霊研究家のエド・ウォーレンと妻ロレイン・ウォーレンが現地に派遣される。夫妻は、超常現象を調査する中で、家族の恐怖と信仰の狭間に立たされる。現場では椅子が宙に浮き、録音機には不気味な声が入り込み、新聞記者たちも恐怖を目撃する。だが、地元の専門家たちは懐疑的で、これは子どもたちの悪戯だと報道する。事件は瞬く間に「エンフィールドのポルターガイスト」として世間の話題となった。
ウォーレン夫妻は霊の存在を確信しつつも、証拠が足りず一度は現地を離れる。しかし、エドが録音した音声の中に複数の霊の声が同時に語りかけていることを発見し、事態は急展開を迎える。ロレインは祈りの最中に悪魔的存在「ヴァラク」の幻視を見て、それが事件を操る真の黒幕であることに気づく。エドとロレインは再びエンフィールドへ戻り、嵐の夜、家の中で暴走する家具や飛び散るガラスの中、命懸けでジャネットを救出する。ロレインは悪魔の名を呼び、信仰の力でヴァラクを地獄へ送り返す。事件の後、ホジソン家には穏やかな日常が戻り、ウォーレン夫妻も再びアメリカへ帰国する。夫妻は自宅の展示室に新たな音楽箱を置き、静かに次の事件を予感させて物語は終わる。
映像のトーンがとても印象的で、ロンドンの冬の湿った空気と重たい雲の下、薄暗い光の中で展開する怪現象が実に効果的に撮られていました。流れるようなカメラワークと光の扱いが見事で、特に夜のシーンでは街灯の橙色が冷たい恐怖を際立たせています。
ホラー映画としての見せ方も王道で、次々と襲いかかる恐怖が絶妙な間で配置されており、観客を休ませない構成になっていました。音の使い方や視線の誘導も巧みで、驚かせるだけでなく、じわじわと恐怖を積み重ねていくタイプの演出がとても上手でした。幽霊の存在もあの手この手で現れ、時に姿を見せず、時に真正面から迫ってくる。ホラー演出の緩急のつけ方が非常に丁寧でした。
そして何より、本作が興味深いのは、幽霊の正体が単なる霊ではなく、さらに上位の存在によって操られていたという構造です。おじいさんの霊の背後にヴァラクという悪魔的存在がいたという展開には意外性があり、恐怖に層を加えていました。宗教的な象徴や信仰との関係を丁寧に描いており、ただの心霊ホラーに留まらない奥行きを感じます。
また、ウォーレン夫妻の人間味が感じられる部分も印象的で、夫婦の信頼関係や祈りの力が、恐怖の只中でしっかりと支柱になっていました。実在の事件を題材にしているだけに、信じることと恐れることの境界をどう生きるかというテーマがにじみ出ています。
130分という長さはホラー映画としては少し長めですが、テンポがよく、緊張感の持続に成功していると思います。とはいえ、恐怖描写が続く後半はやや息継ぎのない印象もあり、もう少し短くまとめてもよかったかもしれません。 とはいえ、その密度がこの作品の魅力でもあり、最後まで視覚的な興奮が途切れませんでした。
全体を通して、恐怖と信仰、家族の絆を丁寧に描いた本作は、ホラー映画でありながら静かな余韻を残す作品でした。
☆☆☆☆
鑑賞日: 2016/12/12 Blu-ray 2025/10/18 U-NEXT
| 監督 | ジェイムズ・ワン |
|---|---|
| 脚本 | チャド・ヘイズ |
| ケイリー・W・ヘイズ | |
| ジェイムズ・ワン |
| 出演 | ベラ・ファーミガ |
|---|---|
| パトリック・ウィルソン | |
| フランシス・オコナー | |
| マディソン・ウルフ | |
| サイモン・マクバーニー | |
| フランカ・ ポテンテ |



コメント