●こんなお話
元恋人と再会し、台北で麻薬カルテルに立ち向かう話
●感想
アメリカのDEA(麻薬取締局)に所属するジョン・ローラーは、料理人として麻薬組織に潜入していた。だが、正体が露見し、キッチンで壮絶な乱闘を繰り広げた末に作戦は失敗。上司からの叱責を受け、休暇を命じられる。
そのジョンには、かつて台北での極秘任務中に出会った女性ジョーイという過去があった。彼女は当時、犯罪組織のドライバーとして優秀な働きを見せ出会い、2人は短い関係を持った。
現在、ジョーイは台北で暮らしており、今の夫は実業家として名を馳せるクワン。だが、その裏の顔は麻薬カルテルの幹部であり、ジョーイは裕福な生活を送りながらも心の奥に影を抱えている。ブランド品、高級車、豪華な邸宅。それらの輝きの中で、彼女はかつての自分を失っていた。
ジョンは休暇の名のもとに再び台北へ向かう。目的はクワンの違法ビジネスを暴くため。彼が追っていたのは、クワンが管理する麻薬取引の帳簿。そこには彼の犯罪を裏付ける証拠が記されていた。
帳簿をジョンに送ってきたのは、驚くことにジョーイの息子だった。しかしそれがバレて、捕まる息子、クワンに脅され、情報を流すよう仕向けられていた彼は、すきをついてジョーイと共に逃走する。ジョンのもとへ辿り着いたジョーイ親子を待っていたのは、クワンの部下たちの襲撃だった。ジョンは反撃し、銃撃戦の中で仲間を失いながらも、かろうじてホテルを脱出する。
ジョーイの故郷の村に逃げ込んだジョンは、傷を負いながらも息を整える。ジョーイはそこで、息子が実はジョンとの間に生まれた子であると明かす。
一方で、息子は再び無謀にもクワンの屋敷に忍び込み、案の定簡単に捕らえられてしまう。ジョンとジョーイは彼を救うためクワンと対峙するが、約束を破って、ジョーイと息子が連れ去られる。ジョンは台北の街を駆け抜け、車で逃走するクワンを追い詰める。道路を駆け抜け、車にドロップキックして、激しい肉弾戦の末にクワンを制圧。
その後、ジョンとジョーイ、そして息子は新たな生活を求めてフランスへ渡って穏やかな時間があり、戦いの果てに見つけたささやかな安らぎを感じておしまい。
アクション映画として非常に満足度の高い作品でした。冒頭の潜入捜査バレるシーンから最後の追走劇まで、テンポの良さと迫力のある演出が続き、観ていて息をつく暇がありません。特にジョンと共に戦う仲間の描かれ方が印象的で、きちんと見せ場を持ち、散り際までかっこよく描かれていました。
クワンの部下たちもまた強烈で、入れ墨に覆われた太い腕で銃を構える姿がとにかく様になっています。中盤の銃撃戦や格闘シーンのキレも良く、車に乗ったクワンにジョンが台北の街を走って追いつき、ドロップキックを放つ場面は思わず声が出るほどの熱量でした。さらに映画館での乱闘シーンでは、背景にチャン・イーモウ監督の『LOVERS』が上映されており、スクリーンに映る金城武とアンディ・ラウが戦いの後ろで輝くという、奇妙な余韻のある演出も印象的でした。
ただ、物語としてはやや既視感のある構成で、新鮮味という点では控えめに感じました。主人公が追い詰められた状況から意外に簡単に形勢を逆転してしまう場面や、息子が敵の屋敷に自ら忍び込んで案の定捕まるという展開には、少し笑ってしまうところもあります。それでも、娯楽映画としての勢いと完成度の高さで最後まで楽しめる仕上がりでした。
全体として、王道のアクション映画の魅力が詰まった一本だと思います。熱量のあるカメラワーク、台北の街の湿度を感じる映像、そして暴力の中に見えるわずかな優しさ。ジョン・ローラーという男の生き様やジョーイの抑圧からの解放、台北の夜景とともに記憶に残る作品でした。
☆☆☆
鑑賞日:2025/10/26 シネマート新宿
| 監督 | ジョージ・ホアン |
|---|---|
| 脚本 | リュック・ベッソン |
| ジョージ・ホアン |
| 出演 | ルーク・エヴァンス |
|---|---|
| グイ・ルンメイ | |
| サン・カン | |
| ワイヤット・ヤン | |
| パーネル・ウォーカー |

