映画【ザ・グリード】感想(ネタバレ):海の怪物と闘う船上のアクション・サバイバル

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●こんなお話

 豪華客船で怪物が暴れる話。

●感想

 モンスター映画の醍醐味をしっかりと味わえる、王道ともいえる海洋モンスター・アクションでした。導入から緊張感を途切れさせることなく、豪華客船と密輸船という異なる立場の人間たちが、未知の怪物と対峙していくという展開は、非常にスリリングで手に汗握るものでした。何が起きているのか、次に誰が犠牲になるのか、観客に先を読ませない構成で、自然とスクリーンに集中してしまいます。

 舞台となるのは、太平洋を航行中の巨大な豪華客船。そこに現れたのが武装した強盗団。彼らが乗っ取ろうとする最中、密輸品を運んでいた小型船が合流し、事情を知らぬまま怪物との遭遇へと巻き込まれていきます。登場人物たちは一癖も二癖もあるような人たちばかりで、誰に感情移入するか迷ってしまうほどでした。しかも善人とは呼び難いキャラクターが多く、全体的にどこか荒々しく雑多な空気が漂っているのが、この作品らしさにもつながっていたように感じます。

 驚かされるのが、作品が始まってから50分ほど経つまで怪物の全貌を見せないという演出。これは非常に効果的で、何者かが海中から現れ、次々と人間を引きずり込んでいく様子が丁寧に描かれていきます。その“姿が見えない恐怖”に、じわじわと不安が膨らんでいく感覚があり、観客の想像力を刺激する作りがとても上手でした。そしてついに姿を現した怪物のビジュアルが強烈で、巨大な触手に包まれた不気味なフォルムは、見ただけで胃の奥がヒュッとなるような、そんな生理的な嫌悪感すら引き出されるような造形。あれに生きたまま飲み込まれるのは絶対に嫌だと思わせる説得力がありました。

 怪物の登場以降は怒涛の展開で、一気にアクションパートへ突入します。船内という密閉空間の中で繰り広げられる逃走劇と応戦、テンポよく進行していく中にも見せ場がしっかりと用意されており、観ていてまったく飽きさせません。時に火薬が爆発し、時に触手が船を持ち上げ、キャラクターたちが命懸けで出口を探す様子が疾走感たっぷりに描かれています。

 また、強盗団の中に潜んでいた裏切り者の存在が浮かび上がってくるくだりもありました。豪華客船を意図的に通信不能にし、怪物の存在を知りながら乗客を見捨てた張本人が暴かれる流れも用意されているのですが、主人公がその正体をあっさりと見破り、そして裏切り者もあっさり白状してしまうというスピード感には思わず笑ってしまいました。あの展開の速さには、驚くと同時に「もう少し駆け引きがあっても…」と思いながらも、その潔さがこの映画らしいテンポを作っていたのかもしれません。

 さらに、ただの船のオーナーが怪物に関するうんちくを突然語り出す場面などもあり、「なぜ君がそんなことを知っているんだ」とツッコミたくなる要素も満載。こうした部分も含めて、ある種のB級映画的なおおらかさと勢いが感じられ、気軽に楽しめる作品でした。

 ストーリーに複雑さはなく、モンスターに襲われた人間たちがどうにかして生き延びようとする、そのシンプルな構成がむしろ潔く、アクションと緊張感を存分に楽しめる一本だったと思います。

☆☆☆

鑑賞日:2012/07/10 Hulu

監督スティーヴン・ソマーズ 
脚本スティーヴン・ソマーズ 
出演トリート・ウィリアムズ 
ファムケ・ヤンセン 
ケヴィン・J・オコナー 
ユマ・デイモン 
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