●こんなお話
校内乱闘事件で分断がさらに加速したコブラ会やミヤギ道空手の面々や新コブラ会とかとも対立していく話。
●感想
前シーズンで巻き起こった高校での大乱闘の余波が続く中、物語は動き始める。ミゲルは重傷を負って入院し、ロビーはその責任を追う形で姿を消し、やがて留置所へと送られてしまう。
一方、ジョニーは愛弟子ミゲルの負傷と、息子との関係悪化に心をすり減らしながら、酔いどれの日々を送り、ふらふらと職を探す始末。彼の姿はどこか間抜けで哀愁があり、それでも前を向こうとする姿には微かな希望も感じられる。
そんなジョニーとは対照的に、ダニエルは仕事面で大きな問題を抱えていた。長年のパートナーである日本車メーカー「ドヨナ」からの契約解除の危機に直面し、その打開策を探すため、彼は日本へ向かう。まずは東京、そして沖縄へと足を延ばす旅のなかで、まさかの【ベスト・キッド2】に登場したキャラクターたちと再会する流れになる。
とくに、かつての宿敵チョーゼンとの再会は意外で、かつ濃密な時間だった。彼がダニエルに伝える「敵を倒すための技」は、単なるファンサービスに留まらず、今後の展開にも関わってくる重要な伏線として描かれている。
コメディとしては、ジョニーのアナログ人間っぷりがとにかく楽しいです。SNSの使い方もわからず四苦八苦しながら、「ベスト・キッド」のヒロインにコンタクトを取ろうと奮闘する姿には、観ていてつい笑ってしまう場面も多かったです。ミゲルのリハビリもアメリカ的なノリが炸裂していて、音楽に乗せて「立ち上がれ!」と励ますテンションは、まさに王道の再起モノの魅力が詰まっていたと思います。
コブラ会ではホークやトリーといった若手たちが、依然としてクリーズ先生の強硬な指導のもと、攻撃的な姿勢を崩さない。トリーは暴走し、ホークは仲間に対しても威圧的な態度を取り続ける。彼らの行動は物語の不安定さを象徴していると思います。一方で、ダニエルの娘はミゲルとロビーの間を揺れ動きながら、シリーズ全体を通じて複雑な人間関係の中に身を置いている。
中盤ではクリーズの過去、ベトナム戦争での体験が語られ、なぜ彼が今のような思想に至ったのか、その背景が少しずつ明かされる。そして、ジョニーは新たな道を切り開くべく「イーグルファング空手」を立ち上げ、かつてのライバルだったダニエルと協力関係を築くか否かという流れに。ふたりの過去を思えば、この関係の変化がとても興味深く描かれていたのは印象的でした。
クライマックスは再びの大乱闘。相変わらず長回しでの戦闘シーンが続き、これはもう、役者さんもスタッフさんもかなりリハーサルしたんじゃないかと思わせる迫力で見せ場を作ってくれます。その後のグリースVSジョニー、ダニエルの連携による戦いはまさに師弟を背負った大人たちの一戦で、見応えのあるシーンになっていました。
とはいえ、コブラ会もミヤギ道空手も、生徒たちが前シーズンと同じように乱闘騒ぎを繰り返していることに、少し複雑な気持ちにもなりました。先生たちの指導があまり生かされていないようにも思えて、ミヤギさんが空の上から見ていたら涙ぐんでいるのではと感じてしまう瞬間もありました。ロビーもまるで【スター・ウォーズ】のアナキンのように迷いと怒りに引きずられ、彼を導くはずのジョニーとダニエルは、どこかジェダイとしての覚悟が揺らいでいるようにも見えたのですが、それすらもシリーズらしい温かさを感じさせてくれました。
盛りだくさんの要素を詰め込みながら、それでもキャラクターたちの成長や関係性の変化を丹念に描いていたのが良かったです。ファンへのサービス精神と物語としての展開を両立させた、見ごたえのあるシーズンだったと思います。
☆☆☆☆
鑑賞日:2021/09/16 NETFLIX
出演 | ラルフ・マッチオ |
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ウィリアム・ザブカ | |
コートニー・ヘンゲラー | |
タナー・ブキャナン | |
メアリー・マティリン・マウサー |