映画【カジュアリティーズ】感想(ネタバレ):戦場の狂気と正義のはざまで揺れる兵士の物語|ブライアン・デ・パルマが描くリアルなベトナム戦争

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●こんなお話

 ベトナム戦争中に偵察任務の小隊が現地の女性をレイプして殺害した戦争犯罪の話。

●感想

 序盤は、主人公たちアメリカ兵の小隊がベトナム戦争の戦場に送り込まれ、極限状態を共に体験する構成。地下トンネルから突如現れるベトコン、村人の誰が敵かわからない緊張感、常に張り詰めた空気の中で神経が削られていくという。どこから襲われるかわからない状況に置かれた兵士たちのストレスがリアルに伝わってきます。

 個人的に印象に残ったのは、ジョン・レグイザモが演じた兵士のキャラクター。「自分は強姦は嫌だ」と言って最初は主人公に同調する姿勢を見せるけれど、最終的には命令に逆らえずに加担してしまう。葛藤はしているけど、最終的に流されてしまうその弱さがすごく人間的で、自分だったらどうしていたかと考えさせられました。

 戦争映画としてのスケール感も十分。銃声や爆破音が鳴り響く戦闘シーンに加え、主観カメラやスローモーションを駆使した演出など、ブライアン・デ・パルマらしい映像の力も随所に光っていました。中盤以降はサスペンス要素も強まり、主人公が仲間の非道な行為を上官に報告した結果、命を狙われるようになる展開もハラハラ。

 特に重たいのは、偵察任務中に上官の命令で村の少女を拉致するというシーン。主人公だけが明確に反対し、他の仲間はみな上官の指示に従ってしまう。極限状態の中で「まとも」でい続けることの困難さが胸に刺さる。戦場の命令、そして仲間内の同調圧力の恐ろしさがしっかり描かれていて、ただただ心がすり減ってしまいました。

 裁判が終わった後、ショーン・ペンが主人公に何かを耳打ちする場面が印象的で、最後に地下鉄でベトナム人の少女に似た女性と出会うというラストに少しだけ救いがあるものでした。とはいえ、全体としては非常に辛く、重く、そして考えさせられる作品でした。

☆☆☆☆

鑑賞日:2021/03/26 U-NEXT

監督ブライアン・デ・パルマ 
脚本デイヴィッド・レイブ 
原作ダニエル・ラング 
出演マイケル・J・フォックス 
ショーン・ペン 
ドン・ハーヴェイ 
ジョン・C・ライリー 
ジョン・レグイザモ 
ツイ・ツウ・リー 
エリック・キング 
ヴィング・レイムス 
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