映画【テレーズ 情欲に溺れて】感想(ネタバレ):抑圧と情熱が交錯する不倫サスペンス:フランスの地で描かれる秘めた愛

in-secret
スポンサーリンク

●こんなお話

 好きでもないいとこと結婚させられて姑にもこき使われて嫌気がさしてた日常に不倫相手が現れて旦那が邪魔になってとよくある不倫の話。

●感想

 子ども時代、父親の都合で一人のおばさんの家に預けられた主人公。そのまま父は姿を消してしまい、彼女はその家の息子と自然な流れで結婚を決められてしまう。だがそこには愛情が育まれる余地はなく、形ばかりの夫婦関係に不満を抱えながら日々を過ごしていた。やがて舞台はフランスへと移り、彼女は姑に日々こき使われながら、感情の置き場を見失っていく。そんな鬱屈した生活の中、ある日突然、夫の同僚でワイルドな魅力を漂わせる男が現れる。

 その出会いをきっかけに、彼女の抑圧された情熱が静かに火を灯しはじめ、不倫関係へと発展していく。一線を越えたふたりの関係は次第に激しさを増し、日常の中での背徳がスリルへと変わっていく。愛も性も満たされない結婚生活の中で彼女が選んだのは、現在の夫の存在を消してしまおうとする危うい選択だった。

 物語はそこからサスペンスへと舵を切り、不倫が露見するか否かという駆け引き、そして罪の意識と欲望のせめぎ合いが描かれていく。ベッドの中での逢瀬や、後戻りのできない決断、冷たい視線と緊張感が交錯するシーンの連続。そんな中、口のきけない状態となった母親の存在が一つの鍵となり、真相を暴こうとする静かな抵抗も始まっていく。寝たきりの母親がわずかな動作で訴えかけようとする描写には、サスペンスならではの緊迫感が込められていたと思います。

 物語の展開自体は、不倫を軸にしたサスペンスの王道ともいえるもので、ある意味で「よくある構図」の中に収まっていた印象がありました。展開の多くは定石通りで、ハラハラする場面も一定のリズムで訪れます。大きなサプライズがあるわけではなく、エロティックな方向にも全振りしているわけではないため、全体の印象としては中間的な温度感の作品だったように感じました。

 その一方で、時代背景や文化的な描写も挿し込まれており、「親や家の都合で結婚を決められる」という風習には驚かされました。息子の友人だからという理由で将来を決定されてしまうという設定に、フランスの田舎における家族観や社会的な価値観が浮かび上がっていたと思います。

 主演を務めたのはエリザベス・オルセン、オスカー・アイザック、そしてトム・フェルトンといった、ハリウッドでも知られた面々。そんな俳優たちがヨーロッパの空気感の中で不倫ドラマを繰り広げるという点に、ひとつの見どころがあったのではないでしょうか。舞台はフランスでありながら、セリフは英語という点にも、いかにも国際合作作品らしさが感じられました。

☆☆☆

鑑賞日:2021/03/27 DVD

監督チャーリー・ストラットン 
脚本チャーリー・ストラットン 
出演エリザベス・オルセン 
オスカー・アイザック 
トム・フェルトン 
ジェシカ・ラング 
タイトルとURLをコピーしました