●こんなお話
サバンナで人間に怒りを持ったライオンに襲われる家族の話。
●感想
密猟者たちがライオンの群れを襲い、ほとんどを仕留めた中で1頭だけが逃げ出す。そのライオンを追いかけていたところから物語が始まる。
医師である主人公は、妻を亡くして以来、娘たちとの関係に距離ができていた。彼は娘たちと共にアフリカのサバンナを訪れ、旧友である動物研究者を訪ねる。親子の溝を埋めることも目的のひとつであり、大自然に触れることで心をほぐそうとしていた。
現地に着いた彼らは、まずライオンの群れを観察しに行き、サバンナの壮大な風景の中で息を呑む時間を過ごす。だが、その後訪れた知人の村は静まりかえっており、すでにライオンに襲われ壊滅していたことが判明する。緊張感が一気に高まり、そのまま移動を続ける一行の前に負傷者が現れ、学者までもがライオンに襲われてしまう。主人公たちの乗った車も襲撃を受け、動かなくなってしまう。
ライオンの脅威がすぐ近くにあるなか、車内で身を潜めたり、負傷した学者を救出しようとしたりと、状況は刻一刻と悪化していく。そこへやってきたのは助けではなく、密猟者たちだった。しかもその密猟者たちもすぐにライオンに襲われ、銃や車のキーを探す混乱の中でさらに緊迫した時間が続いていく。学者と娘が乗った車が崖から転落するなど、目が離せない展開が続いていく。
なんとか密猟者の車を使って廃墟のような建物に逃げ込み、応急処置を施すものの、そこへも再びライオンが現れる。主人公は娘を守るため、自らの身を盾にしてライオンとの直接対決に挑む。その様子を見守る別のライオンのグループが加勢するという展開が描かれ、命の危機を乗り越えたあと、ようやく救助が到着する。
サバンナの風景はどこまでも美しく、長回しの撮影によってその広がりがしっかりと伝わってきました。その大自然のなかで、ひとつの家族が再びつながっていく姿には心を動かされました。
特に、主人公の友人である学者のキャラクターが終始落ち着いていて頼もしく、観ていてずっと応援したくなる存在でした。彼がライオンたちの習性やサバンナの自然を熟知しているからこそ、知識と理性がサバイバルのなかで光っていたと思います。
そして何よりも、クライマックスでのイドリス・エルバとライオンの一騎打ちは見どころでした。人間と獣の力と意志がぶつかるような構図を正面から見せてくれて、その盛り上がりに応えてくれる構成がとても印象的でした。アクションだけでなく、父親としての彼の姿勢や、娘を思う心の強さも画面から伝わってきて、家族の物語としても満足感のある作品だったと思います。
☆☆☆☆
鑑賞日:2023/05/19 Amazonプライム・ビデオ
監督 | バルタザール・コルマウクル |
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脚本 | ライアン・イングル |
出演 | イドリス・エルバ |
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シャールト・コプリー | |
イヤナ・ハーレイ | |
リア・ジェフリーズ |