映画【大輪廻】感想(ネタバレ):歴史と現代が交錯する三章構成、複雑な人間模様と美しい舞台美術

THE WHEEL OF LIFE
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●こんなお話

 いろんな時代で好きになる男女と邪魔する男性が輪廻転生の話。

●感想

 明朝の時代に始まります。明の特殊部隊の兵士たちと反乱軍が激しく剣と弓矢でぶつかり合う戦闘シーンが繰り広げられます。その中で、州知事の娘との結婚問題が絡んだ複雑な人間関係が描かれます。しかし、登場人物が多く、また関係性がわかりにくいまま戦いが進むため、少し混乱してしまうかもしれません。特に反乱軍のリーダーが横恋慕をして争いが生じるあたりは、その背景が掴みにくく感じました。

 非常に印象的だったのは、倭寇として登場する、言葉を発しない男の存在。彼が上官に殺される際、突然日本語で叫ぶ場面があり、その迫力に驚かされました。続くシーンで焼けた肉が映し出される演出もかなり強烈で、視覚的に深い印象を残します。終盤では反乱軍のトップがヒロインのもとへ薬を混ぜたお茶を持ち込み、盲目にするという展開になり、その後三つ巴の争いが起こり多くの者が命を落とす展開へと進みます。あまりにも急展開で何が起こったのか戸惑う方も多いかもしれません。

 第二章は時代が変わり清朝へと移ります。こちらは劇団を中心にした物語で、主宰と看板娘の関係が描かれます。そこへ旅の途中で立ち寄った村の金持ちの息子が看板娘に恋をしますが、主宰がそれを邪魔しようとする展開になります。やがて京劇の舞台上で短剣による殺害事件が起こりますが、それが故意のものだったのか事故だったのか、その真相はあえて曖昧にされているため観客の想像に委ねられています。

 第三章は現代パートに変わり、冒頭はいきなり前衛舞踏のような独特なダンスシーンから始まります。劇団のメンバーが舞台で訪れた離島で暮らす兄弟の弟が、劇団の看板娘に想いを寄せます。しかし彼女は無神論者で、島の伝統的な兄の儀式を強く否定する様子が描かれており、そのやりとりにはどこかユーモラスな味わいもありました。兄と弟、そして恋愛相手の間での葛藤が丁寧に描かれ、台湾の儀式がじっくりと映し出されることで、文化的な深みも感じられます。

 そして最後は、ヒロインがひとり静かに舞い踊る姿が映され、その姿をただ見つめるような余韻の残る幕引きとなります。このラストシーンがとても印象的で、多くのことを語りかけてくる作品でした。

☆☆☆

鑑賞日:2023/05/18 DVD

監督キン・フー 
リー・シン 
パイ・シンシュイ 
脚本チャン・ヨンシャン 
キン・フー 
原作チュン・リン 
出演シー・チュン 
ベン・シュエフェン 
チャン・ホウイエン 
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