映画【BATON バトン】感想(ネタバレ):ロトスコープ映像で描く未来へのバトン

BATON
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●こんなお話

 体内にOSを取り込んだら政府から狙われて逃げつつ過去からのバトンを受け継いでいく話。

●感想

 エピソード1「密航者」では、未来の惑星アベルを舞台に物語が始まる。そこでは人間とロボットが共に暮らす社会が築かれている。ある日、惑星間輸送船から降り立った謎の存在、密航者が警備隊と格闘の末に砂漠の惑星へ落下し、機能を失ってしまう。その場に居合わせたのが人間型ロボットのアポロと、見た目はロボットながらも実は人間のミカルだった。密航者が握っていたのは究極のOS「サイファー」が収められたメモリー。好奇心に駆られたアポロはそれを取り込むが、直後に意識を失ってしまい物語は次の章へと移る。

 エピソード2「アポロとミカル」では、「サイファー」を取り込んだ影響で声を失ったアポロを前に、ミカルが医師に助けを求める。そこで目を覚ましたのは兵士型ロボットのトムボーイだった。彼は過去を語り始め、「サイファー」がかつてロボット反乱の指導者ハデスが用いた伝説のOSであると明かされる。50年前に起きた反乱が現在へとつながっていることが示され、追手に迫られる主人公たちは地下へと逃げ込む。ここから過去と現在が複雑に絡み合い、物語は大きく動き出す。

 エピソード3「サイファ」では、「サイファー」が単なるプログラムではなく、過去の人格を内包していることが明らかになる。アポロは自身が「サイファー」「アルテミス」「ハデス」として存在した記憶を呼び覚まし、命を受け継いできた存在であることを知る。過去から未来へと繋がる“バトン”の物語がここで提示され、アポロは仲間のミカルを守るようトムボーイに託し、自らは空へと飛び立っていく。

 全体を通して、映像表現にロトスコープの技術が用いられており、その独特の質感が独自の世界観を生み出していました。しかしその動きがどこか不気味に感じられる場面も多々あり。また、第2話で描かれる大杉漣さんと内藤剛志さんによる説明が長く続くくだりは情報量が多いものの、頭に入りにくい印象を受けました。さらに第3話で突然明かされる過去や前世の要素は唐突で、感情移入するのが難しく感じる展開もありました。

 一方で、命をつないでいく「バトン」というテーマは非常に興味深く、挑戦的な試みだったと思います。俳優たちの演技や独特の映像美には確かに魅力があり、作品全体を通して新しいことに挑もうとする気概は強く感じられました。ただし構成が散漫で、物語としての引力がやや弱いのは残念でした。

☆☆

鑑賞日:2025/08/23 DVD

監督北村龍平
脚本岩井俊二
出演市原隼人
上戸彩
大杉漣
ケイン・コスギ
ミムラ
藤原竜也(特別出演)
内藤剛志
NorA
渡辺裕之
桜庭和志
船木誠勝
IZAM
小橋賢児
ムッシュかまやつ
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