●こんなお話
地球外生命体がいる地域からの脱出する話。
●感想
物語はNASAの探査機がメキシコに落下し、そこから未知の生命体が繁殖してしまった世界が舞台になる。感染区域と呼ばれる立ち入り禁止エリアが広がり、人々は怪物の存在と隣り合わせで暮らしている。そんな中、写真家のアンドリューは会社から命じられ、社長令嬢のサマンサをアメリカに送り届ける役を担うことになる。最初は列車で国境を目指すが、パスポートを盗まれてしまい、やむなく密航業者に頼って感染区域を越えることになる。そこからは兵士やガイドに護衛されながら、荒廃した町や鬱蒼とした森を抜けて旅を続ける。道中ではラジオやテレビの報道から「怪物が現れた」という声が流れ、破壊された建物や戦闘の跡を目にするが、実際に怪物の姿を目にすることはほとんどない。
旅のなかで二人はお互いの素顔を少しずつ見せ合っていく。アンドリューには息子がいて会いたがっていること、サマンサは婚約者がいるものの関係が冷めきっていることが語られる。最初は義務で行動を共にしていた二人だが、次第に信頼を寄せ、やがて恋愛感情のようなものさえ芽生えていく。感染区域を抜ける途中、護衛の兵士たちは怪物との遭遇で命を落とし、二人は生き延びるために自らの力で国境を目指さざるを得なくなる。ジャングルを歩き、廃墟を抜け、ついにアメリカに入った二人がたどり着いたのはガソリンスタンドだった。そこで彼らが目撃するのは、巨大な怪物同士が光と音を使って交わる神秘的な姿。その光景にただ見入る二人の前に米軍が現れ、救出されて物語は終わり。
派手な怪獣映画というよりは、荒れ果てた世界を舞台に男女が旅をするロードムービーであり、低予算を逆手にとった見せ方が特徴的でした。ヘリや戦車が登場したり、車が持ち上げられたりと映像的な迫力もあり、安っぽさは感じさせなかったです。どうやって撮影や編集を行ったのか興味が湧くほど工夫が詰まっていたと思います。物語の根底にあるのは「モンスターとは一体何なのか」という問いかけであり、軍の爆撃で人々が犠牲になっていく現実を見せられることで、人間こそが脅威ではないかと感じさせられました。
旅を続けるうちにわかるのは、モンスターは攻撃されなければ人間を襲わず、卵を守るために戦っている存在であるということ。その事実を知っていくなかで、最初は嫌々だった二人の関係にも変化が訪れる。クライマックスで目撃するモンスターの交わりは美しく、そして切なさを含んでいるものでした。新聞記者と社長令嬢という身分の違いを抱えた二人は、最後に別々の車に乗せられ、結ばれることはなく。怪物は結ばれるのに自分たちはそうならない。その対比が心に残り、思わず感傷的になれるものでした。
もちろん気になる点もあり、物語が本格的に動き出すのは感染区域に入ってからであり、それまでの展開がやや長く感じられました。また、海外旅行で最も避けるべきパスポート紛失をあっさり受け入れるサマンサの反応も不思議に思えました。危険地帯に入る理由がアンドリューの私的な動機に寄っているのも気になった点ではありました。ただ、90分という尺で最後まで飽きずに観られたのは事実であり、怪物バトルを期待すると違うかもですが、ロードムービーとしての味わいを楽しむには十分に魅力のある作品だったと感じました。
☆☆☆
鑑賞日:2011/07/27 DVD 2025/08/27 Amazonプライム・ビデオ
監督 | ギャレス・エドワーズ |
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脚本 | ギャレス・エドワーズ |
出演 | ホイットニー・エイブル |
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スクート・マクネイリー | |
フェルナンド・ララ |