●こんなお話
子どもができずに養子縁組を決めて育てた夫婦とその子を産んだ実の母親の人生の話。
●感想
河瀨直美監督作品らしい木々が揺れる自然描写の中で養子縁組についての紹介があって勉強になる作品でした。
ただ話自体はよくある展開にステレオタイプなキャラクターの連続で140分の長さの体感時間が個人的には相当な長さに感じてしまう映画でした。最初に子どもを育てていて、幼稚園のお友達をケガさせてしまった疑惑事故が発生して相手方の親御さんとトラブルになる。ここでの相手方の親御さんが電話で罵るあたりからいかにもなステレオタイプの嫌味なお母さんで怪しい雲行きで、そこから主人公たちの回想になって子どもができにくいため悩んで、子どもがいなくても2人で生きていこうと決心した中、旅行中に里親制度を紹介しているテレビ番組が出てきますが。そこが結構な長さ、ザ・ノンフィクション的な番組を見せられてどうしたらいいのか戸惑う演出でした。その後、里親の制度の軽い紹介があって子どもを引き取り育てる主人公たち。
話の視点が変わって今度は中学生の女の子の話にシフトして、彼女が恋人ができて林が揺れたり、窓ガラスが真っ白になる逆行の淡い光の中、子どもができて親から猛反対されて里親制度の運営施設のもとで出産する。このときの母親の「この子まだ中学生なのよ!」と泣き叫びますが、いまだに日本の田舎の親描写というのはこれまたステレオタイプな描かれ方なのかと残念な気持ちになるキャラクターたちでした。
出産施設で過ごして、出産後、実家に戻るけれどそこでの家族の扱いに嫌気がさして東京へ出て新聞配達のバイトをするけれど、そこでも借金問題のトラブルに巻き込まれて…という展開。ここでも田舎を飛び出して東京に出たら化粧変わって見た目が変わってというのもステレオタイプな描かれ方でもう少し落ちていく描写はなかったのかなと感じました。このときの借金の取り立てのヤクザみたいな人たちもいかにもヤクザなキャラクターだったり。
それに役者さんではない方々ぽいドキュメンタリー的な演出も混ざっていて、そこにメインの役者さんも芝居ぽくない芝居をするのも劇映画として入りこみにくかったです。
当たり前のことを延々と140分に引き伸ばしている印象で、だいぶ時間をかけて描いていたと思ったら、ラストでいきなり早朝か夕方かマジックアワー的な時間帯に行方不明だった実の母のもとに育ての親をいきなり発見して声をかけて、しかもその時間帯に幼稚園児を連れていて探していたのかと疑問に感じてしまうエンディングでした。
10数年前のハリウッド映画の【JUNO】とかではポップに描いているけれど、2020年のいまだに日本では血の繋がりとかを保守的な考えを大事にするんだと再確認できる映画ではありました。
☆☆
鑑賞日:2020/10/28 TOHOシネマズ川崎
監督 | 河瀨直美 |
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脚本 | 河瀨直美 |
共同脚本 | 高橋泉 |
原作 | 辻村深月 |
出演 | 永作博美 |
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井浦新 | |
蒔田彩珠 | |
浅田美代子 | |
佐藤令旺 | |
田中偉登 | |
中島ひろ子 | |
平原テツ | |
駒井蓮 | |
山下リオ | |
森田想 | |
堀内正美 | |
山本浩司 | |
三浦誠己 | |
池津祥子 | |
若葉竜也 | |
青木崇高 | |
利重剛 |