●こんなお話
子どものときに事故とかいろいろあって、成長した主人公たちの話。
●感想
物語は女子高生の主人公が、仲の良かった友人の男の子と付き合うことから始まる。冒頭わずか15分で二人は恋人同士となり、青春らしい日々を送るが、ある出来事によって愛する人を失ってしまう。喪失の痛みを抱えながら成長していく主人公は、やがて23歳の社会人となり、取引先で岡田将生が演じる青年と出会うことになる。そこから物語は新しい局面を迎えていく。
出会った青年とはすぐに恋が進展するかに思えたが、彼もまた子どもの頃に負った深い心の傷を抱えていた。子どもに対して素直に向き合えない自分自身と格闘している青年と、過去の喪失と向き合う主人公。二人は「なんだこいつ」と互いに反発しながらも、愛する者を失う怖さや忘れてしまうことへの恐怖を共有し、次第に心を通わせていく。物語は二人の成長を描きながら、日常のシーンをコミカルに織り交ぜて進んでいく。
全体的にとても見やすく、分かりやすい作品だと感じました。ただし主人公二人の現在進行の物語に加えて、それぞれの回想シーンが断片的に挿入されるため、ややテンポの悪さを覚える場面もありました。それでも、キャラクターごとに見せ場が用意され、過去の傷を乗り越えようとする姿は観る者の共感を誘います。ただ、特に岡田将生さん演じる青年に関しては、本人の努力よりも子どものほうが先に答えを出してしまう形となり、そこに感動的な音楽が流れる演出には少し戸惑いを覚えました。
展開自体はスムーズで、盛り上げる場面はしっかりと見せてくれるため好感を持てました。ただし主人公たちが自分の力で困難を乗り越えたという実感が薄いため、印象が強く残らない部分もあるように思います。二人の関係が急に恋愛へと発展していくのもやや唐突に感じましたが、それを過去を克服した証と受け止めるなら納得できる部分もあります。
さらに、主人公が思いを寄せる相手との間に立ちはだかる漫画家の存在も重要な要素となっているのですが、この人物との関係性について主人公が早合点してしまう描写は、少し肩透かしのようにも感じました。最後に誤解が解けたときの落差は大きいのですが、もう少し早く理解できるのではないかと思ってしまったのも事実です。
それでも、物語は人が過去をどう受け止め、どう乗り越えていくのかという普遍的なテーマを描いていて、観る側にも考えさせられる部分が多かったです。事故や喪失といった出来事を通して、人生の不確かさや再生の道を描いた作品だったと感じました。
☆☆☆
鑑賞日: 2013/10/25 試写会
監督 | 新城毅彦 |
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脚本 | 田中幸子 |
大島里美 | |
原作 | いくえみ綾 |
出演 | 長澤まさみ |
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岡田将生 | |
波瑠 | |
中村蒼 | |
古川雄輝 | |
平田薫 | |
田山涼成 | |
和田聰宏 | |
MEGUMI | |
池脇千鶴 | |
高良健吾 |