●こんなお話
金塊を持って敵中突破する人たちの話。
●感想
三つの国が争う混迷の世界。ひとつの国が別の国に攻め込み、その国を滅ぼしたものの、滅ぼされた国の金塊とお姫様の行方は依然として謎に包まれている。物語はその金塊探しに従事する奴隷であった主人公が、過酷な運命の中から逃れようと奮闘するところから始まる。
河原で偶然見つけた金の一部に心躍らせるも、大男に捕らわれてしまう主人公。彼は滅ぼされた国の侍大将であり、同じく捕らわれていたお姫様も共に敵陣を突破しようと計画を練る。身分を隠しながらの逃走劇は、検問での緊迫した場面や、侍たちが民百姓を殺す残酷な現実を目の当たりにし、お姫様が民の苦しみを耐えきれず立ち上がる姿など、様々なドラマが織り込まれている。
逃走の果てにお姫様が再び捕まってしまうが、主人公は砦の地下に穴を掘り、毒ガスを放って混乱を引き起こし、見事に救出を果たす。さらに侍大将同士の一騎打ちでは敵の大将を倒し、砦は大爆発。こうして無事にお姫様を故郷へ送り届けた主人公は静かに去っていく。
樋口真嗣監督らしい迫力ある特撮描写は随所に光り、冒頭のガス爆発や殺陣のシーンは特に見応えがありましたた。緊張感と迫力が映像から伝わり、アクション映画としての魅力は十分に感じられます。
一方で、主人公の松本潤さんとヒロインの長澤まさみさんによるラブストーリーの要素は、個人的には物語の流れをやや停滞させる余計な挿入に思えたり。お姫様が民の苦しみに心を痛める姿に対し、突然「俺と逃げよう」と言い放つ主人公のセリフは唐突で、ヒロインのキャラクターも最初の強さから急に優しさを見せるなど、変化に戸惑いを覚えてしまうものでした。
また、敵中突破の緊迫感やハラハラドキドキの面白さはあまり感じられず、関所突破の工夫や追跡を逃れるスリルも薄く、物語の緊張感が少々物足りなかったです。主人公にヒーロー性を持たせたことでクライマックスの姫救出は成立するものの、そのヒーロー的存在はむしろ阿部寛さん演じる侍大将に託した方がドラマがより深まったのではないかと感じます。結果として、主人公と相棒の間にあったはずのバディ感も薄れ、少し寂しい印象を受けました。
さらに、エンドロールで流れる主題歌も個人的には作品の雰囲気とあまり馴染まず、残念に感じました。期待していただけに、今の時代の時代劇としての新しい挑戦として受け止めるには、いささか惜しい仕上がりの1作でした。
☆☆
鑑賞日: 2008/12/15 DVD 2020/03/09 WOWOW 2022/12/18 NETFLIX
監督 | 樋口真嗣 |
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オリジナル脚本家 | 菊島隆三 |
小国英雄 | |
橋本忍 | |
黒澤明 | |
脚色 | 中島かずき |
出演 | 松本潤 |
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長澤まさみ | |
椎名桔平 | |
宮川大輔 | |
甲本雅裕 | |
高嶋政宏 | |
國村隼 | |
KREVA | |
黒瀬真奈美 | |
生瀬勝久 | |
古田新太 | |
ピエール瀧 | |
上川隆也 | |
阿部寛 |