ドラマ【ザ・パシフィック】感想(ネタバレ):兵士の視点で描く太平洋戦争のリアル

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●こんなお話

 太平洋戦争を米兵目線で描いた10話。

●感想

 物語は、歴史の教科書で見かけるような戦争の全体像ではなく、一人の兵士の視点から描かれていきます。作戦の意義や政治的背景といった大きな話ではなく、泥にまみれながら銃を握る兵士の日常が積み重ねられていて、戦争の「風景」を肌で感じるような描写に引き込まれました。

 戦地はガダルカナル、ペリリュー、硫黄島、そして沖縄と、太平洋戦線の主要な激戦地が舞台になります。アメリカ海兵隊の兵士たちが、降伏という選択をとらない日本軍と消耗しながら向き合っていく。戦場の風景はどこも過酷で、自然環境に翻弄されながら、敵味方問わず精神的に追い詰められていく様子がリアルに描かれていました。

 とくに印象的だったのが、アメリカ側の兵士たちが、戦う相手である日本兵の価値観や文化に困惑し、戦争が進むほど疲弊していく姿です。アメリカ兵が全員余裕を持って戦っていたわけではなく、多くの兵士がケガを負い、精神的にも極限状態になっていく。その現実を丁寧に描いていた点が印象に残りました。敵として描かれる日本軍の砲撃や銃撃の迫力も凄まじく、アメリカ側の日本に対する認識が垣間見えるような演出にも注目しました。

 中でも第9話、沖縄戦の描写には言葉を失いました。序盤はどこか優しげで穏やかだった主人公が、戦争の狂気の中で次第に変わっていき、「皆殺しにしてやる」と叫ぶ姿には、戦争というものが人の内面に何をもたらすのかを考えさせられます。民間人を巻き込んだ市街戦の描写は胸が苦しくなるような場面が続き、逃げ場のない状況が続く中での兵士たちの心理描写も見事でした。

 登場人物は多く、それぞれのバックボーンも丁寧に描かれているのですが、戦闘シーンでは皆泥と血にまみれ、ヘルメットをかぶっているため、途中で誰が誰なのか分からなくなってしまうこともありました。群像劇として楽しむにはやや難しく感じる部分もあり、終盤にテロップで登場人物たちの戦後の人生が紹介されても、いまいち顔と名前が一致しない人物もいて、少しもどかしさを感じました。

 それでもこのドラマは、太平洋戦争を個人の視点から丁寧に描いた作品として、日本人として観ておく価値のある作品だと思います。戦争を描くということは、ただ史実をなぞるだけでなく、その場にいた「誰か」が何を見て、何を感じ、どう変わっていったのかを伝えることだと改めて感じさせてくれました。大きな歴史の流れの中で、たった一人の兵士が経験した日々の記憶に焦点を当てたことで、戦争の輪郭がより生々しく、そして身近に感じられる内容でした。

☆☆☆☆

鑑賞日: 2016/04/03 Blu-ray 2020/10/26 Amaon・プライム・ビデオ

製作総指揮トム・ハンクス
スティーヴン・スピルバーグ
ゲイリー・ゴーツマン

出演ジェームズ・バッジ・デール
ジョセフ・マッゼロ
ジョン・セダ
アシュトン・ホームズ
ジョシュ・ヘルマン

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