映画【事故物件ゾク 恐い間取り】感想(ネタバレ):夢を追う若者が出会う“恐怖”

Jiko Bukken: Zoku Kowai Madori
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●こんなお話

 タレントを目指して仕事として事故物件に住んでいろんな幽霊と遭遇する話。

●感想

 福岡で工場勤めをしていたヤヒロは、上京してタレントを目指す。芸能事務所に所属したものの、仕事のチャンスはつかめない。そんなある日、テレビ局のディレクターから「事故物件住みますタレント」という番組企画への出演を打診される。SNSで話題になりたい、テレビに出たい──そんな一心で彼はその依頼を受ける。こうして「必ず憑りつかれる部屋」「因縁の古旅館」「降霊するシェアハウス」といった曰くつきの場所を転々としながら、心霊現象をレポートしていく生活が始まる。

 最初の部屋では、かつて自殺が起きた現場に足を踏み入れる。夜中に女性の声が聞こえ、畳には爪が落ちており、インターホン越しに見知らぬ女性が立っている──確かに“何か”がいる気配が漂う。霊媒師の助言で引っ越すが、次に訪れたのは一家心中があったという古い旅館。生配信中に少女の声が収録され、スタジオは騒然となる。続くシェアハウスでは、ヤヒロの前に老婆の霊が現れ、こっくりさんの儀式を行った直後、血液が天井から降ってくる。恐怖の中で同居人が屋上から飛び降り、悲劇が起きてしまう。

 逃げるように現場を去ったヤヒロは、エキストラの仕事で出会った女性・花鈴に助けられ、彼女の家に身を寄せる。しかし、そこもまた事故物件だった。花鈴の奇行が目立ち始め、やがてヤヒロは、自分の所属していた事務所の社長が幽霊であり、その正体が花鈴の父親であることを知る。発見された遺体を火葬した後、2人は再出発を誓うが、テレビ局で憧れのタレントと再会したとき、ヤヒロはその背後に“子どもの霊”を見てしまう──すべての恐怖は終わっていなかった。でおしまい。

 全体を通して、黒髪の女性や老婆の霊が突然現れるシーンには古典的な恐怖の力があり、心臓が跳ねる瞬間も多かったです。演出としては、照明や効果音を最小限に抑えて、登場人物の反応や静けさの中にじわじわと恐怖を積み重ねていくスタイルで、深夜に一人で見ると背筋が冷たくなる感覚を味わえます。特に、画面の隅でふと人影が写っているショットの使い方は印象的でした。

 ただ、構成としては1軒1軒のエピソードが淡々と進んでいく形式で、解決もなく“怖いことが起こって次の部屋へ”という連続が少し単調に感じられる部分もありました。けれど、その繰り返しの中でヤヒロの精神が少しずつ壊れていく様子が描かれており、単なるホラーというよりは、現代社会の「承認欲求」と「孤独」が生み出した怪談のようにも見えました。

 事故物件という題材を、ただの怪談ではなく、タレント業界の闇やメディアの消費構造と結びつけて描いているのは興味深いです。テレビで“怖い”を拡散することに夢中になりながら、いつの間にか自分がその“怖さ”の中心になってしまう──そんな皮肉な物語でした。

☆☆

鑑賞日:2025/10/12 Amazonプライム・ビデオ

監督中田秀夫 
脚本保坂大輔 
原作松原タニシ
出演渡辺翔太(Snow Man)
畑芽育 
山田真歩 
じろう(シソンヌ)
加藤諒 
金田昇 
諏訪太朗 
佐伯日菜子 
ますだおかだ 
なすなかにし 
河邑ミク 
松原タニシ 
大島てる 
田中俊行 
亀本ゆず 
笹原妃菜 
櫂作真帆 
森直子 
笹原妃栞 
正名僕蔵 
滝藤賢一 
吉田鋼太郎 
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