映画【見える子ちゃん】感想(ネタバレ):見えてはいけないものを見る少女の恐怖と成長

Mieruko-chan
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●こんなお話

 幽霊が見えちゃう女子高生の話。

●感想

 女子高校生・四谷みこは、ごく普通の学校生活を送っていた。ある日、授業中に何気なくクラスで挙手を数えていると、人数が合わないことに気づく。目を凝らした瞬間、彼女の視界に“何か”が入り込んだ。それは普通の人間には見えない、歪んだ顔の霊だった。以来、みこは街中でも学校でも、どこにいても得体の知れない霊が見えるようになってしまう。

 恐怖を押し殺し、みこは「見えていないフリ」を決める。どれほど近くに霊が寄ってこようと、目を合わせず、声も発さず、息を潜めて日常を過ごそうとする。だが、親友の百合川ハナの背後に霊が憑いていることを知った時、みこの心は大きく揺れる。彼女の異常な食欲や不可解な行動は、明らかに何かに取り憑かれている証拠だった。

 同級生の二暮堂ユリアは、霊感の強い少女として知られており、みこの“見えている”様子に気づく。さらに、文化祭の準備が進む中で、生徒会委員長の権藤昭生や、新任の臨時担任・遠野善が加わり、学校は一見いつもと変わらない活気を見せているが、どこかに見えない気配が満ちていた。

 みこは次第に、遠野善の周囲に強い霊の気配を感じ取るようになる。彼の背後には、怨念をまとった何かがいる。ハナが倒れ、意識を失ったことで、ついにみこは「見えないふり」という自分のルールを破り、ユリアや昭生と共に行動を起こす決意をする。善に憑りついていたのは、かつての恋人の生霊だと考えられていたが、真実は違っていた。

 それは善の母親の霊だった。母の過去と善の心の闇が交錯し、彼を苦しめていた。みこたちは神社の敷地で独自の“お祓い”を試み、恐怖と祈りが交じり合う中、霊を解放していく。やがて迎えた文化祭では、クラスが手がけたお化け屋敷を舞台に、これまでの出来事が静かに繋がっていく。委員長・昭生の秘密、みこの父親にまつわる真実が明らかになり、物語はおしまい。 

 この作品は、ホラー要素と青春ドラマが巧みに絡み合った物語でした。突然“見えてしまう”という設定自体はよくあるものですが、その中で描かれる「見えないふりをして生きる」少女の心理がとても繊細です。
 霊たちの造形も印象的で、静止画でも心をざわつかせるほどの不気味さがありながら、恐怖の中にどこか哀しさを感じさせるバランスが見事でした。

 また、文化祭というごく普通の高校行事の中で、登場人物たちの人間関係や“霊と人との境界”が浮かび上がってくるのも魅力的でした。とくに、委員長の正体が明かされた瞬間は驚かされました。最初に彼が登場したとき、「女子高ではなかったのか」と思った自分を思わず笑ってしまいましたが、物語が進むにつれてその存在の意味が丁寧に描かれ、すっかり引き込まれてしまいました。

 全体として、幽霊描写の怖さと、それを超える人間ドラマのあたたかさが共存している作品だと思います。霊が見えるという異常な日常の中で、みこが何を守ろうとするのか。静かで優しい視線で描かれる青春ホラーとして、とても完成度の高い仕上がりでした。

☆☆☆

鑑賞日:2025/10/28 Amazonプライム・ビデオ

監督中村義洋 
脚本中村義洋 
原作泉朝樹
出演原菜乃華 
久間田琳加 
なえなの 
山下幸輝 
堀田茜 
吉井怜 
高岡早紀 
京本大我 
滝藤賢一 

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