映画【フォーエバー・パージ】感想(ネタバレ):境界を越える暴力と希望のサバイバルドラマ

THE FOREVER PURGE
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●こんなお話

 12時間人殺しオッケーだったのが時間無制限になって大変な話。

●感想

 アメリカのとある田舎町。広大な牧場を営む白人一家のもとで、数人のメキシコ人労働者が働いている。家族の中でも、牧場主やその妻などは比較的彼らを普通に接しているが、息子だけはメキシコ人に対して強い敵意と嫌悪感を抱いており、その感情が日常の何気ない態度のなかでじわじわと表れていく。

 そんな空気が漂うなか、「パージ」の夜がやってくる。一年に一晩だけ、あらゆる犯罪が合法になるというあの制度。住民たちは毎年のこととして、家を要塞化したり、避難所のような場所に集まったりと、緊張に包まれた一晩を過ごす。朝が訪れ、無事に夜を乗り切ったという安堵の空気が広がり、人々はいつもどおりに日常へ戻ろうとする。

 しかし、今年のパージには異変があった。町の様子はどこかおかしく、路上では暴力行為が依然として続いている。突如として現れる暴漢たち。彼らの口から語られるのは「フォーエバーパージ」――つまり、一夜限りのパージではなく、永続的な無法状態を求める思想。制度を無視し、暴力が常態化する世界へと突き進もうとする者たちが現れたのだった。

 牧場の一家やメキシコ人労働者たちは、この暴力の連鎖に巻き込まれていく。夫婦は逃げる途中で離れ離れになり、それぞれが異なる場所で過酷な状況に置かれる。命の危機を乗り越え、再会を果たしてはまた引き離され、それでも何度も立ち上がっていく姿が描かれる。最終的には、暴力から逃れるためにメキシコへの避難を目指すが、国境はすでに閉鎖。希望を絶たれかけたそのとき、先住民の案内によって秘密の抜け道を辿ることになる。

 しかし、その背後からはフォーエバーパージを掲げた暴漢たちが迫っていた。限界寸前の状況で、主人公たちは銃を手に迎え撃つことを決意する。廃屋のような場所での銃撃戦、追いつめられながらも抵抗する彼らの姿とともに、物語は終息へと向かっていく。

 本作は、「パージ」シリーズとしてのコンセプトを大きく変化させた内容だったように思います。これまでのように“合法な一夜の暴力”という時間的な制約のなかで起こるスリルとは異なり、今回は制度が破られ、無制限の暴力がテーマになっていたため、やや“パージらしさ”が薄れてしまった印象も受けました。それでも、ある意味では“日常の暴力化”という恐ろしさが描かれていた点では興味深かったです。

 また、アクションの描写に関しては少し残念な部分もありました。銃撃戦のカット割りやキャラクターの配置が把握しにくく、特にクライマックスの屋内戦闘では、誰がどこで何をしているのか把握するのが難しかったです。反対に、夜の町をじわじわと進むような長回しの場面は、緊張感と臨場感があり、非常に印象的でした。

 シリーズ全体として、アメリカ社会の分断や階級格差、人種間の摩擦といったテーマをエンターテインメントの形で戯画化してきた本作。今作でも、その延長線上にある社会的な緊張感を強く感じました。娯楽作品としてのテンポと派手なアクションを備えつつ、現代社会へのメッセージも感じ取ることができる一本だったと思います。

☆☆☆

鑑賞日:2023/01/31 Amazonプライム・ビデオ

監督エヴェラルド・ヴァレリオ・ゴウト 
脚本ジェームズ・デモナコ 
製作ジェイソン・ブラム 
マイケル・ベイ 
出演アナ・デ・ラ・レゲラ 
テノッチ・ウエルタ 
キャシディ・フリーマン 
レヴェン・ランビン 
ジョッシュ・ルーカス 
ウィル・パットン 
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