映画【七人の侍】感想(ネタバレ):登場人物の魅力と群像劇の面白さが詰まった大作

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●こんなお話

 百姓が野武士に村を襲われるから侍を雇って戦う話。

●感想

 3時間27分という長尺ながら、一本の線で最後まで駆け抜ける力強さを持った作品で、侍映画の代表格として語り継がれるのも納得の構成力と人物の厚みを感じました。特に前半の仲間集めのシークエンスが圧巻で、それぞれのキャラクター紹介が物語の中に自然に溶け込み、観客に無理なく登場人物の個性を印象付けていきます。

 盗賊による人質事件を巧みに解決する勘兵衛の初登場からして見応えがあります。坊主に変装して相手を油断させる知恵と胆力、それを見た若侍・勝四郎がその場で弟子入りを志願するくだりも非常にスムーズで、人間ドラマとしても惹きつけられました。続いて仲間に加わる五郎兵衛、七郎次、久蔵、平八、そして菊千代と、いずれも際立った個性を持ち、それでいて物語の重心からはぶれることなく、チームの輪郭が立体的に描かれていきます。

 彼らが農村に入り、村人との距離を測りながらも防衛のために村を要塞化していくプロセスもとても丁寧で、訓練風景や武装の工夫、村人たちが次第に意識を変えていく過程など、どの場面にも物語の筋と感情が込められていて、観ていて飽きることがありません。特に菊千代が百姓のしたたかさと、それに向き合ってきた侍の非情さを涙ながらに語る場面には、時代劇としての深みとテーマ性を強く感じました。

 戦いが始まってからの緊張感の持続も素晴らしく、特に敵の砦へ夜襲を仕掛ける場面では、百姓たちとその家族の関係性が見え隠れする描写にも重みがありました。馬と人とが縦横無尽に駆け回る戦闘シーンは今観ても迫力満点で、その危険さが逆にリアリティを高めていたように思います。久蔵が敵陣に鉄砲を奪いに向かう姿、そしてそれに呼応するかのように菊千代が自らも飛び込む流れは、静と動のコントラストが効いていて非常に印象的でした。

 そして、雨の中での決闘。映像としても、演出としても、あまりに有名なシーンではありますが、あらためて観るとその空気感、緊張感の持続、カメラワークと役者の動きが全て噛み合っていて、やはり時代劇の金字塔と呼ばれるにふさわしい仕上がりになっていました。

 確かに、じっくり描かれている分、少し長いと感じるシーンがないとは言えませんが、それも含めてこの作品の贅沢さとして味わえるのが大きな魅力です。テーマと娯楽性を高い次元で融合させた、映画史に残る一本だとあらためて感じました。

☆☆☆☆☆

鑑賞日:2013/09/14 Blu-ray

監督黒澤明 
脚本黒澤明 
橋本忍 
小国英雄 
出演志村喬 
稲葉義男 
宮口精二 
千秋実 
加東大介 
木村功 
三船敏郎 
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