映画【式日】感想(ネタバレ):無機質空間と少女の物語

Ritual (2000)
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●こんなお話

 監督が線路で少女と出会って振り回される話。

●感想

 線路を歩いていた主人公は、そこで寝そべっている少女と出会う。「明日は私の誕生日なの」と無邪気に話す彼女との交流が始まっていく。少女の家を訪れると、まるでビルのように広い建物が広がっており、屋上では手すりに掴まり「今日も大丈夫だった」と確認するのが日課となっていた。さらに秘密のフロアを案内したり、各階を一つひとつ紹介したりと、彼女なりの生活が淡々と続いていく。

 主人公が東京で映画監督をしていたと知った少女は、彼を「カントク」と呼ぶようになる。やがて少女は素材として彼を撮影し始め、カメラを通して二人の関係が少しずつ形を帯びていく。しかし、彼女の過去には死んだ姉や母親との複雑な関係が影を落としており、その存在を強く否定しようとする姿も見られる。主人公はそんな彼女に寄り添い、ときに追いかけ、ときに隣に添い寝しながら時間を過ごす。物語が進む中で、少女を知る男性が現れ、最後には母親との直接の対峙も描かれていく。

 全体としては私小説的な構成で、男女それぞれのモノローグが挿入される。電車や工場地帯の風景を背景に、常軌を逸した行動を見せる少女と、それにひたすら優しく接する主人公。レールや工場の配管、立ち上る煙などの映像表現は強く印象に残り、少女が暮らす無機質な空間の魅力と相まって独特の空気を醸し出していた。

 映像的には目を引く部分が多く、少女の存在感も強い作品だと感じました。ただ、本作は123分という長さの中で淡々と物語が進んでいくため、徐々に集中力を保つのが難しくなる場面もあったのは正直なところです。主人公や少女の行く末に強く心を寄せるというより、アート映画らしく目の前の出来事をただ浴びて感じ取ることが求められる作品であると受け取りました。映像と空気感を味わうことができれば、その独特の世界観に浸れる映画だったと思います。

☆☆

鑑賞日:2022/11/30 Amazonプライム・ビデオ

監督庵野秀明 
脚本庵野秀明 
原作藤谷文子 
出演岩井俊二 
藤谷文子 
村上淳 
大竹しのぶ 
出演(声)松尾スズキ 
林原めぐみ 
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