●こんなお話
泥棒稼業していたらハメられて壮絶な囚人ライフを送る話。
●感想
映画のオリジナル版は未見で、知っているのはスティーブ・マックイーンの顔が大きく写ったジャケット写真くらい。その程度の知識で劇場に足を運びました。配給がトランスフォーマーというのもあって、内容はともかく、映像の質感には期待していた部分もありました。
主演はチャーリー・ハナム。『パシフィック・リム』などで見せる端正な顔立ちとタフな雰囲気が印象的な俳優で、今回はやつれていく姿も含めてかなりの熱演を見せてくれます。そして何より惹かれたのは、ラミ・マレックの出演。『MR.ロボット』や『ザ・パシフィック』などで独特な存在感を放っていた彼が、この作品では囚人仲間として登場し、静かな友情と知性を支える役として作品に重みを与えていました。
物語の始まりは、主人公が小さな盗みを繰り返しながら恋人と甘い時間を過ごすという、どこか危うくも幸せな日常から始まります。しかしある日、裏社会のボスの罠にかけられ、殺人の罪を着せられてしまう。法廷で有無を言わさず終身刑を言い渡され、南米沖の孤島にある「悪魔島」と呼ばれる刑務所へと送られてしまいます。
ここからいよいよ、脱獄ものの王道展開がスタートします。人権のかけらもないような扱いを受け、過酷な環境に心身ともにすり減っていく囚人たち。独房での孤独、暴力、飢え、裏切り、微かな希望。そうした日々の繰り返しが、観る者にもずっしりと重くのしかかってきます。130分という上映時間のほとんどが、こうした過酷な環境の描写に充てられていて、観終えたあとは少し疲労感すら残りました。
特に印象に残ったのは、中盤にある独房での時間。台詞はほとんどなく、ただ壁を見つめ、身体が衰えていく過程を淡々と映していく演出には、監督の意図がしっかりと感じられました。ただ個人的には、時間の流れがやや単調に感じられてしまい、少し眠気を誘われる場面もあったことは否めません。
物語は脱獄の計画と実行を繰り返していく構成で、失敗と諦め、再起と工夫の積み重ねが続いていきます。その中で主人公の不屈の精神、そしてチャーリー・ハナムの極限状態での演技が画面に張り付くような迫力を生み出していました。細身になっていく体も含め、自由を求めて進み続ける人間の執念をひしひしと感じさせてくれます。
鑑賞後、ふと「自由」という言葉の重みについて考えさせられました。当たり前にあると思っていたものが、実はどれほど脆く、そして価値のあるものなのか。そんなことを気づかせてくれる作品でした。過酷な描写が続く内容ではありますが、主演2人の静かな熱演が心に残る、見応えのある1本だったと思います。
☆☆☆
鑑賞日 2019/06/26 TOHOシネマズ川崎
監督 | マイケル・ノアー |
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脚本 | アーロン・グジコウスキ |
オリジナル脚本 | ダルトン・トランボ |
出演 | チャーリー・ハナム |
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ラミ・マレック | |
トミー・フラナガン |
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