ドラマ【次の被害者 シーズン1】感想(ネタバレ):映画級の映像美と心を打つ脚本が光る台湾ドラマ|自殺と生を描く重厚サスペンス

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●こんなお話

 謎の連続殺人が起こるけど、それは自殺なのかどうなのかを警察や記者が捜査する話。

●感想

 本作はまるで映画のような圧倒的な迫力とクオリティを誇る台湾ドラマで、画面全体のルックが非常にダークでスタイリッシュ。それでいて決して安っぽく見えず、むしろハイクオリティな映像演出に圧倒されました。

 物語の展開も一筋縄ではいかず、勧善懲悪といった単純な構造ではなく、「生きること」「死ぬこと」、特に自殺という重いテーマについて、深く考えさせられる脚本がとても印象的でした。鑑賞後にはしばし沈黙してしまうような余韻があり、人間の弱さや希望、そして絶望に真正面から向き合うストーリーテリングが光っていました。

 また、本作は特殊メイクにも力が入っており、溶け落ちたような死体や焼死体など、グロテスクでありながらもリアリティを伴ったビジュアルが登場。これらは不快ではなく、むしろ作品世界の説得力を増す重要な要素として機能しており、特殊メイクチームの技術力と情熱を感じることができました。そういった意味でも、ホラーテイストを含むサスペンス作品としての完成度も高いと感じました。

 物語の構成としては、各話ごとに謎めいた事件が描かれ、それぞれの事件で被害者たちが自ら命を絶ったのではないか? という視点から調査が始まります。その過程で、なぜ彼らは死を選んだのか、その背景にある感情や状況が少しずつ明かされていきます。そして、シリーズが進むにつれて、主人公の刑事の娘がこれらの事件に関与している可能性が浮上し、彼女が何をしているのか、真相を突き止めようとする動きが始まります。

 主人公は、自ら証拠を改ざんして警察の捜査をかいくぐり、独自に事件の真相へと近づこうとしますが、やがて警察の捜査網もその背後に迫ってきます。そして、もう一人の主人公である記者は、被害者側から事件を追い、まったく異なる角度から真実に迫っていきます。この記者もまた、幼い頃に両親を自殺で失っている可能性が示唆され、彼自身もまた”生き残った者”としての葛藤を抱えています。

 物語の後半では、ついに主人公と娘の対峙が描かれ、被害者たちが実際には「死にたい」と望んでいたこと、そしてそれを手助けしていた者たちの存在、「自殺ほう助」という極めてセンシティブなテーマが浮かび上がってきます。「自殺を望む者をどう扱うべきか?」「生きることは義務なのか?」というような、倫理的にも深く複雑な問いが提示され、視聴者に強い印象を残しました。

 死ぬほど辛くても、それでもなお生き続けることの意味、そして「死にたい」と願う人がいたとき、周囲の人間はどうすべきなのか――本作は、そんな重くて重要なテーマを刑事ドラマという枠組みの中で真正面から描き切った、非常に完成度の高いドラマであったと感じました。映像、脚本、演技、すべてが調和し、心に残る一作でした。

☆☆☆☆

鑑賞日:2020/10/18 NETFLIX

出演ジョセフ・チャン
アン・シュー
ジェイソン・ワン
ルビー・リン
ムーン・リー
ホアン・ハー
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