●こんなお話
18歳の女性の恋愛とかの話。
●感想
大学生活の延長のような、自由でのびのびとした空気の中で、主人公を含む登場人物たちが過ごしている姿が印象的でした。本作は、同性愛をテーマに据えた作品ではありますが、劇中に登場する主要なキャラクターの多くがすでに性的指向を受け入れ、互いに理解し合っているという関係性が描かれています。そのため、社会的な差別や葛藤という重いテーマが前面に出ることはなく、日々の些細な感情や恋愛のすれ違いが軸となっています。
恋人と会えないことで落ち込んだり、友人に恋愛相談を持ちかけたりと、描かれていくのはとてもパーソナルで等身大のエピソードばかりで、どこか青春群像劇のような趣がありました。同性間の恋愛であるという設定はあくまで背景にあり、物語の主眼は人と人との関係の機微や、若者たちが抱える感情の揺れに置かれている印象を受けました。
ただ、物語がある転機を迎える場面では、やや唐突に職業面の描写に転じていく展開がありました。恋愛が上手くいかなくなったタイミングで、急に洋書の翻訳の仕事の描写が挿入され、しかもその仕事が父親の紹介によるものだという設定には少し驚かされました。心の整理のために新たなステージに進む、という意図は感じましたが、その展開の切り替えにはもう少し段取りがあっても良かったかもしれません。
全体を通して、登場人物に重い困難が降りかかるわけではなく、恋愛における戸惑いや誤解など、小さな障害の積み重ねで構成されていました。大きなドラマチックな展開がない分、登場人物たちの感情の変化を丁寧に追う作りではありましたが、やや淡く流れていくような印象も否めませんでした。
個人的には、主人公にとっての内面的な葛藤や、それを乗り越えていく過程がもう少し深く描かれていれば、より感情移入しやすかったように感じました。恋愛ものとしては爽やかで心地よく鑑賞できる作品でありながら、もう一歩踏み込んだ描写を求めてしまうのは、作品全体に漂う柔らかさと安定感があったからこそかもしれません。
☆☆☆
鑑賞日:2011/11/25 DVD
監督 | 川野浩司 |
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脚本 | 金杉弘子 |
原作 | やまじえびね |
出演 | 吉井怜 |
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今宿麻美 | |
高橋一生 | |
平岩紙 | |
須賀貴匡 | |
川合千春 | |
寺泉憲 | |
秋本奈緒美 | |
池内博之 | |
小泉今日子 | |
浅田美代子 | |
石田衣良 |