映画【ALIVE アライヴ】感想(ネタバレ):密室から始まる実験、言葉と暴力の行方

Alive (2002)
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●こんなお話

 死刑囚の刑の執行が行われるけど、ある実験に参加させられてスーパーパワーを手に入れていっていく話。

●感想

 120分という上映時間のあいだ、物語の多くは暗い照明の室内で展開していく。冒頭から最後まで、明確な色彩の変化や光の演出が少なく、視覚的にはやや単調な印象を受けます。そうした環境の中で観客を惹きつけるためには、際立った演技や新鮮なアクション、あるいは思いもよらぬ物語のひねりといった要素が求められる。だが、この作品はそのどれにも触れてこなかったです。

 物語の中心に据えられているのは、ある実験に参加させられた2人の死刑囚。1人は静かで内に秘めた思いを抱える男、もう1人は言葉を止めない狂犬のような人物。その2人のやり取りが作品の前半を大きく占める。部屋の隅に置かれた椅子と机、無機質な壁、狭い空間の中で繰り返される会話は、ほとんどが実験の内容や背景の説明に終始していて、キャラクターのぶつかり合いといった劇的な高まりを感じさせる場面は少ない。話が続くうちに、それが映画というよりも、長いイントロダクションを読み聞かされているような気分になってきます。

 一方、実験を観察する研究者たちのシーンも随所に挟み込まれていきますが、ここでも会話のほとんどは説明的な内容が中心となっている。「これは軍事転用が可能だ」「エリア51で発見された生物が~」といった設定の提示が続き、興味を引きつけるよりも前に、語られていることがあまりに類型的で、想像の外に出てこなかたです。SF的な素材として、エリア51や宇宙人、極秘実験という題材は今もなお人気ではあるが、それらをどのように見せるかが大切だと感じました。

 主人公となる死刑囚の動機も、最後まで明確に示されない。脱獄を目指しているのか、それともかつての愛する人と再会したいという思いがあるのか、あるいは実験そのものを壊したいのか。行動の動機がはっきりとしないまま進んでいくため、観ている側としては人物の選択に感情を寄せるのが難しくなってしまったと思います。

 物語の途中で登場する謎めいた女性との会話も、展開としてやや唐突に映る。「私は魔女よ」と名乗るこの人物に、主人公が自らの過去を率直に打ち明けていく場面には、心を通わせるという説得力よりも、脚本の都合が先に見えてしまったような印象があったり。

 中盤からようやく動きのあるアクションが始まっていくが、その内容もどこか既視感が強いもので、過去のハリウッド作品を思い出させるような構図が続く。銃撃、肉弾戦、逃走劇といったシーンは一通り揃っているものの、それらが今この作品で描かれる意味が伝わってこず。さらに、クライマックスで登場する敵役の風貌は、あまりに強調された筋肉と派手な衣装により、恐ろしさよりもどこか滑稽さのほうが先に立ってしまっていました。終盤の戦いも、映像が過剰に歪みすぎていて、迫力よりも見づらさを感じてしまったのは残念です。

 物語が終わる頃には、登場人物たちが何を乗り越え、何を手に入れたのかがはっきりしないまま、観終えた感覚が薄く漂っていた。単純なアクション映画としても、またSF的な仕掛けのある物語としても、その輪郭が曖昧になってしまったことで、印象がぼやけてしまったように思います。どこか難解な雰囲気を漂わせつつ、けれど語られる内容はさほど深くもなく、結果として静かな余韻というよりも説明が足りないまま終わったという印象が残りました。

鑑賞日:2013/06/28 DVD

監督北村龍平 
アクション監督下村勇二 
脚本北村龍平 
山口雄大 
桐山勲 
原作高橋ツトム 
出演榊英雄 
りょう 
小雪 
國村隼 
ベンガル 
菅田俊 
小田エリカ 
坂口拓 
杉本哲太 
石橋蓮司 
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