●こんなお話
連続銀行強盗犯らしいサーファーたちに近づいて潜入捜査するFBI捜査官の話。
●感想
歴代アメリカ大統領の仮面をつけた強盗グループが、夏のシーズン中に次々と銀行を襲撃する事件が発生。犯人たちの動きや逃走経路から、どうやら彼らはサーファーではないかという疑いが浮かび、FBIの若き捜査官である主人公がその世界に潜入していくという導入から、作品はテンポよく進んでいきます。
主人公は任務のためにサーフィンの腕を磨こうと決意し、波に何度も揉まれながらも一歩ずつ成長していきます。その姿がとても爽やかで、単にサーフィン映画としても見ごたえのあるシーンが随所に散りばめられていました。特にCGがまだ当たり前でなかった時代の作品だからこそ、波の上を滑る映像や、スカイダイビングの生身のアクションにリアルな迫力があり、そこに映る自然の美しさや危うさも一緒に感じ取ることができるのは、この映画ならではの魅力だと思います。
潜入捜査ものとしての軸もあり、犯人たちに近づくうちに主人公が次第に彼らと友情のような感情を育んでいく様子も丁寧に描かれていきます。正義のために潜入しているにもかかわらず、完全に割り切ることができず、仲間のような存在になってしまった相手に対して銃を向けられないという葛藤。空へと銃を撃ち放つシーンは今でも語り継がれる名場面で、演出の力強さも相まって印象に残りました。
そして終盤、逃亡を図る犯人が巨大な波に挑むという選択をし、それを見守る主人公のまなざしにもまた、彼なりの決断がにじみます。言葉少なに交わされる視線と、その場に立ち尽くす主人公の背中が雄弁に語っていて、ここも涙腺を刺激される名シーンのひとつだったと感じました。
サスペンスという観点では、潜入した主人公が早い段階で犯人グループに接近しすぎてしまう展開など、ややご都合主義的な流れもあったとは思います。ただ、それを差し引いてもテンポの良さやキャラクターの魅力、そして映像面でのエンタメ性が上回っていて、最後まで飽きずに観ることができました。
娯楽映画としての完成度が高く、ジャンルの枠を超えて爽快感と余韻の両方を味わえる一本だったと思います。スポーツ、友情、潜入捜査、そして正義と葛藤。そのすべてが波しぶきの中に凝縮されているような、心地よい映画体験でした。
☆☆☆☆
鑑賞日: 2018/10/07 DVD
監督 | キャスリン・ビグロー |
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脚本 | W・ピーター・イリフ |
出演 | キアヌ・リーヴス |
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パトリック・スウェイジ | |
ロリ・ペティ | |
ゲイリー・ビジー |
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