映画【ダンケルク】感想(ネタバレ)

dunkirk
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●こんなお話

 ダンケルク撤退作戦の何人かにフューチャーした話。

●感想

 「映画は映画館で見るべきもの」という映画はテレビやネットなどとは違う特別な娯楽。というものをIMAXカメラという技術で観客を呼び寄せる。という作品でそれは成功していると思いました。青い水平線の中を戦闘機が飛んでいたりする映像に砲撃などの爆音が凄くてIMAXの映画館じゃないと体験できない映画でした。 

 ただそれはIMAXの設備が凄いことがわかるというだけで面白い映画か? と考えれば全く別物だと再確認できる作品でもありました。キャラクターの背景や造形を描くのは放棄していて戦場のリアリティを描くのに特化していると思いますが、本物の戦場を見てもおそらく面白くないように。この映画も面白さが全くなかったです。映像や音響の迫力に圧倒されて集中力が続くのは最初の10分くらいで残りの上映時間はただただ長さだけを感じる退屈さだけが残る映画でした。ハンス・ジマーさんの音楽も延々と鳴り響いて飽きを助長させる音楽で苦痛でした。 

 3つの流れが同時進行で描かれますが、空軍パートはなぜ燃料系が壊れても救出に向かうのか全くわからないパイロットが結構長いこと空中戦をやったりするので、キャラクターの心情がわからないアクションシーンほど退屈なものはなかったです。燃料がわからないサスペンスもさして効果がなくて燃料がなくなるハラハラドキドキも意味があったのか謎でした。そもそもこの空軍パートすら必要なのかわからなかったです。プロペラが止まって滑空していても敵機を撃墜したりしていてみんなを救出するクライマックスの爽快感はなかったです。むしろ「どうしてプロペラが止まった状態で敵機をやっつけられたのか?」というところ疑問だけが残るクライマックスでした。そもそもこのパイロットは凄腕なのかだろうか? 当時のドイツ空軍はへなちょこなのだろうか?  

 マーク・ライランスさんの民間人の船の救出も彼が命を懸けて救出に行く信念がわからないし、どのくらいの距離を船で行ってそれが危険な旅なのか敵がどれくらいいるのかとかもこの映画だけ見てもわからなかったです。そのためこのパートも緊張感がなくて、ただ退屈なだけのパート。 

 海軍の偉い人っぽいケネス・ブラナーさんもただ桟橋で「ホーム」と言って突っ立ってるだけで、民間の船団が助けに来てくれてみんな喜んでましたが、「あなたたち誰? いつの間に来たの?」とここも出来事だけで背景などが描かれないので知らない人が知らない人を助けているだけで本来ならテンションがあがるであろうシーンも外野からポカンと眺めるだけのシーンでした。「フランス軍も助ける」と最後まで残る決断をしますが、そこも「何で逃げないのだろうか?」と人間を描いていないため盛り上がることのない謎の人物。 

 海岸から何とか船に乗って逃げようとする主人公の1人も空爆が来た→ふせて逃げる。船に乗った→沈没から逃げる。船に隠れる→沈没から逃れる。とその場その場で何とか生きようとするだけでどんな人となりかもわからないと彼がどうなろうが知ったこっちゃなかったです。銃弾を撃ち込まれて穴だらけの船底で穴を手で塞ごうとする姿を「撃ちまくられて簡単に穴が開いているのにどうして普通に腕で抑えようとしているのだろう? 逃げないのだろうか」と呆然と見つめるだけの時間。 

 映画は映画館で見るべきという映画館原理主義者のボクで、映画館でしか見られないという作品は嬉しいですが。いかんせん出来事の羅列でドラマがないのはキツかったです。序破急、三幕構成、起承転結、プロットポイント、ミッドポイントなど人類古来から作られてきたエンタメの基本がしっかりとあるエンタメ映画が好きなんだと再確認できました。 

 誰もが楽しめるエンタメ映画ではなくアート映画として実験映画としてこんな大作で作れてしまう環境が凄いなというところは素直に感心もしてしまう作品でした。よくできた戦争再現映像だとは思いますが、それが面白い映画になるわけではないと勉強になる作品でした。本当に面白い作品は映画館で見ても最高で、そんな映画はテレビでも見てもスマホでも見ても心に響くとは思いますが、この映画はIMAXで見てそのビジュアルエフェクト、サウンドエフェクトなど最先端の迫力は感じることはできましたが、ただそれだけで他の媒体で見たら余計見るのが辛いものになっているのではないかと感じました。それはつまりIMAXカメラが凄い、シネコンのスピーカーが凄いというだけで映画が凄いわけではないのではないかと考えながら終わってしまう100分間でした。そしてダンケルク撤退作戦が30万人救出というスケールのデカさだと知って、この映画では数十人程度の規模なのでその偉業が全く伝わってこず歴史の勉強としても残念な作品でした。 

☆☆

鑑賞日: 2017/09/26 TOHOシネマズ新宿  2018/07/24 Netflix

監督クリストファー・ノーラン 
脚本クリストファー・ノーラン 
出演フィオン・ホワイトヘッド 
トム・グリン=カーニー 
ジャック・ロウデン 
ケネス・ブラナー 
キリアン・マーフィ 
マーク・ライランス 
トム・ハーディ 

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