映画【残穢〈ざんえ〉-住んではいけない部屋-】感想(ネタバレ):封印された呪いが連鎖する!“語り”で迫るドキュメンタリー風ホラー

The Inerasable
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●こんなお話

 一人暮らしの大学生が住む部屋で変な音が聞こえたりして不気味な経験を小説家に相談して、その原因を探っていく話。

●感想

 怪談作家として活動している小説家のもとに一通の手紙が届くところから物語が始まります。差出人は大学生で、「自分の住んでいる部屋で奇妙な音がする」「なにか得体の知れない気配がする」といった、不気味な現象に悩まされているとの内容でした。小説家は興味を抱き、同じような怪奇現象に関する手紙を集め始め、大学生とともに調査を進めることになります。

 物語は、関係者に話を聞いて回るというドキュメンタリー風の構成で進んでいきます。話を聞くたびに新たな事実が明らかになり、点と点が線につながっていくようにして、次第に真相に近づいていきます。たとえば、大学生が住んでいる部屋の以前の住人は「赤ん坊の泣き声が聞こえる」と語り、ついには自殺を遂げていたという事実が判明。

 さらに調査を進めるうちに、問題は「部屋そのもの」ではなく「その土地」にあるのではないか、という推理に至ります。過去にはその土地に住んでいた老人が奇行の末に自殺していたり、さらにその前の持ち主も命を絶っていたことがわかります。そして時代をさかのぼるうちに、その場所にはかつて座敷牢が存在していたことが明らかとなり、そこに閉じ込められていた男性が逃げ出して、家の軒下からささやき声を発していたという不気味な逸話が語られます。

 この男性が発狂した原因は、部屋に飾られていた絵画にあるのではないかという話に発展し、その絵の持ち主だった女性について調べることになります。彼女の本家が経営していた炭鉱でかつて大事故が起き、多くの命が失われたことがわかります。やがてその女性の屋敷跡を訪れると、そこには異様な数の神棚が祀られており、主人公たちにも呪いの影が忍び寄っていることを感じさせながらおしまい。

 物語の構成としては、語り部が現れ、その人物の体験が回想として映像化される形式が繰り返されます。それぞれの語りが短編のように独立した恐怖体験として展開されていくのですが、いずれのパターンも同じようなリズムで「幽霊が襲ってくる」という描写が多いため、観る側としてはややマンネリ感が否めませんでした。また、恐怖演出も他のホラー映画で見かけたことのあるような既視感のある表現が多く、目新しさに欠けていた点も気になりました。

 加えて、時代背景がどんどん過去へさかのぼっていき、登場人物も多いため、「いま誰の話をしているのか」が分かりづらくなってしまう場面もあります。小説家と大学生という「聞き手」の主人公たちが、基本的に受動的に話を聞く側にまわることで、物語全体の展開に緊張感や能動性が感じにくかったのも残念でした。住民たちがあまりに自然に重い過去を語り始めるのも、リアリティの面でやや説得力に欠ける印象です。

 そして物語の終盤に登場する怨霊たちが、なぜそのタイミングで主人公たちを襲うのか、その動機も不明瞭です。より深く事件に関わっていた人物たちが襲われないのに、関係の薄い人々が被害を受けるという構造にも一貫性がなく、腑に落ちないまま終わってしまいました。

 とはいえ、怪談作家が怪異のルーツを掘り下げていくという着想や、都市伝説のようにじわじわと広がっていく恐怖の構造は魅力的であり、「どれだけ昔の怨念が今もなお現代に影響を及ぼしているのか」という視点では、怨霊のしつこさと根深さを描いた興味深い一作とも言えます。

☆☆

鑑賞日: 2016/02/04 チネチッタ川崎 2024/09/14 Amazonプライム・ビデオ

監督中村義洋 
脚本鈴木謙一 
原作小野不由美
出演竹内結子 
橋本愛 
佐々木蔵之介 
坂口健太郎 
滝藤賢一 
山下容莉枝 
成田凌 
不破万作 
上田耕一 

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