映画【流転の地球】感想(ネタバレ):地球にエンジンをつけて脱出!中国発SF超大作

the-wandering-earth
スポンサーリンク

●こんなお話

 太陽が滅びそうなので、宇宙ステーションで誘導しつつ地球にエンジンをつけて移動させてたら木星の重力でエンジンがおかしくなって、地球と木星激突を阻止する話。

●感想

 「太陽の死」というスケールの大きな危機に直面した人類が、地球そのものを宇宙船に改造し、太陽系を脱出しようとする壮大なSF作品です。国家という枠組みを超えて「地球連合」が誕生し、全人類が協力して地球に巨大エンジンを取り付け、銀河を旅するという空前絶後のプロジェクトが始動します。

 物語の序盤、主人公は地球を離れて宇宙ステーションへ任務に向かうこととなり、幼い息子を養父に託して旅立ちます。それから10年の歳月が経ち、成長した息子は妹と共に地球の地下都市で生活しています。外の世界に出るため偽造IDを求めてチンピラたちと交渉しますが、揉め事が起き、巨大なゴムボールを膨らませて逃走するといった展開も。

 その後、軍人のふりをして車を奪いますが、検問であっさり捕まり、祖父が釈放の手続きをするも共に拘束されてしまいます。そんな中、地球に大地震が発生。木星との衝突が間近に迫っており、地球滅亡のカウントダウンが始まります。

 一方、宇宙ステーションでは緊急事態のため電力が停止されることになり、すべてのクルーが冷凍睡眠に入るよう命じられます。しかし主人公は、冷凍睡眠に入る直前に息子たちの安否が気になり、命令に背いて行動を開始。地上では、息子たちが軍人と合流して再び任務に参加しますが、激しい任務の中で祖父や軍人たちが犠牲に。任務自体も一時は失敗と見なされ、現地解散となってしまいます。

 絶望が広がる中、「地球のエンジンで木星に点火し、爆発の衝撃波で地球を軌道から外す」という逆転のアイデアが生まれ、世界中の救助隊に呼びかけて作戦が実行されます。ところがエンジンの炎は木星に届かず、失敗に終わったかに思われます。

 そのとき、宇宙ステーションのAIが、地球が滅亡することをあらかじめ知っており、宇宙ステーションを人類文明の継承装置とする「別プラン」を秘かに進めていたことが判明します。それに抗い、主人公は宇宙ステーションの燃料を使って木星に突入し、点火を実行。最終的に地球は軌道から逸れ、木星との衝突を回避。人類は新たな未来へと進むことになります。

 本作の魅力は何と言っても、地球にエンジンを付けて銀河を旅するという荒唐無稽ながら壮大な発想を、実写とCGで圧倒的な映像美として見せてくれる点にあります。地下に住む人類、氷に覆われた地上、止まったエンジンに燃料を届けるチーム、そして宇宙ステーションでサポートするチームが並行して描かれ、複数の視点から壮絶なサバイバルドラマが展開していきます。

 また、息子が地震から逃れ、チームと合流してさまざまな困難を突破する描写には緊張感と臨場感があり、パニック映画としてのエンタメ性も十分。一方で、人工知能が人間の判断に逆らい、主人公がそれに抗って行動する姿は、「2001年宇宙の旅」的なSF的問いも投げかけてきます。

 ただし、クライマックスの「エンジンで木星を爆破する」というプランは非常に突飛で、視覚的には迫力があるものの、何をしているのかが分かりにくい瞬間もあります。また、冷凍睡眠中の他のクルーたちの運命や、キャラクターの多さゆえに背景が描き切れない人物も多く、感情移入が難しい場面もありました。

 それでも、ウー・ジンさんの抑えた演技や、壮大な宇宙の描写、中国映画ならではの“犠牲と美徳”を描く演出は新鮮で、ハリウッドのブロックバスター映画とは異なる魅力にあふれています。細かい部分の整合性よりも、「人類が力を合わせて滅亡の危機を乗り越える」希望に満ちたメッセージが響く、見応えある大作映画でした。

☆☆☆

鑑賞日:2020/05/24 NETFLIX

監督フラント・グォ
出演ウー・ジン
チュー・チューシアオ
チャオ・ジンマイ
タイトルとURLをコピーしました