映画【オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁】感想(ネタバレ):エベレストで繰り広げられる熱血レスキューアクション!役所広司が挑む極限の戦い

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●こんなお話

 エベレストに機密書類輸送中の飛行機が墜落して民間の救助隊が探しに行く話。

●感想

 冒頭からいきなりレスキューの現場へ突入し、派手なアクションと壮大なスケール感で観客を引き込む作りになっていて、まるでハリウッド大作のようなテンションで物語がスタートする。しかも、雪崩に巻き込まれた役所広司さんがどのようにして生還したのか、詳細が語られないまま話が進んでいくので、観ていて気になって仕方がなかった。役名が中国語名になっているという設定も謎が多く、そこにちょっとした混乱と興味が同時に生まれる始まり方になっていました。

 序盤では、「チームウィング」と呼ばれる民間レスキュー集団が登場し、彼らの拠点となるバーのような場所で個性豊かなメンバーが紹介されていく。経営形態や組織の詳細などは曖昧なまま、突然インド政府の関係者らしき人物からの依頼が舞い込む。飛行機が墜落し、標高の高い場所へ救助に向かうという展開なのだが、この依頼主が実は武器商人という裏の顔を持っており、その正体が明かされていく過程は、まさにアジア映画らしい展開に満ちていて、白人俳優の芝居がまたひと味違う空気を加えていた。

 ヒロインには行方不明になった恋人がいて、救助の合間に何度も思い出の回想シーンが挿入される。そのたびに、やわらかな逆光に照らされた彼の笑顔が映し出されるのだが、それがあまりにも繰り返されるので、さすがに観る側としてはどんな感情で受け止めればいいのか迷ってしまった。彼女の心情に寄り添おうとする演出ではあるものの、感情の流れとしてやや一本調子に感じる部分もあったり。

 一方で、役所広司さんもまた、過去にエベレストで娘を亡くした経験があり、その心の傷が物語の根底に流れている。彼の葛藤と、今回のミッションを重ね合わせながら描かれるドラマには、川井憲次さんの音楽がしっかりと寄り添っていて、静かなエモーションを加えていました。ただし、その分だけアクションのテンポは抑え気味になり、レスキュー映画として期待される勢いにはやや欠けていたように感じました。

 いよいよ山岳地帯でのクライマックスへ突入すると、レスキューチームと武器商人一派の対立が激化していく。標高8000メートルを超える“デスゾーン”での戦いになるはずが、実際には殴り合い中心のアクションに終始していて、戦術的な駆け引きやサバイバル的な緊張感はあまり見られなかったです。山岳の知識や装備を活かして敵を翻弄する、というような展開が期待される中で、拳と根性でなんとかなる世界観に振り切っている印象を受けた。登場人物たちが息も切らさず雪山を走り回っている様子からは、人間の進化を感じさせられるほどでした。

 ただ、それも含めて本作の魅力のひとつなのかもしれないです。あえてリアリズムを排して、突っ込みどころ満載のスケール重視で突っ走る作りは、まさに現代中華エンタメならではの醍醐味。何が起こるかわからない予測不能な展開にワクワクさせられ、真面目に観るより“乗って楽しむ”ことが求められる映画だったと思います。役所広司さんが異国の地で躍動する姿を見るだけでも、一見の価値がありました。

☆☆☆

鑑賞日: 2019/11/15  T・ジョイPRINCE品川 

監督ユー・フェイ 
脚本ユー・フェイ
出演役所広司 
チャン・ジンチュー 
リン・ボーホン 
ビクター・ウェブスター 
ノア・ダンビー 
グラハム・シールズ 
ババック・ハーキー 
プブツニン 

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