映画【雨月物語】感想(ネタバレ)

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●こんなお話

 賤ヶ岳の合戦が行われている頃、陶器を都で売って一儲けしようとする主人公とその妻と子、そして弟は戦で立身出世をしようとする。主人公は都で謎のお姫様と誘惑され官能の日々を凄し、弟は妻が止めるのも聞かず具足を手に入れ手柄を立てようとする。待ってる間に奥さんは落ち武者に手籠めにされて……の話

●感想

 ストーリーは単純明快で金儲けと出世がしたいという行動の動機を持った男たちと戦争の悲劇を具現化した女たち。
 そしてこの映画で素晴らしいのは、墨絵のような画面の美しさとカメラワークです。
 特にボクが好きだったのは霧の琵琶湖でのシーンと源十郎が宮木を捜して家を一周する長回しのシーンです。源十郎が荒れた家を一周して戻ると、火が焚かれ、鍋と酒を温める妻がいる。ほっとして安らぐ夫のそばで、こちらに背中を見せる彼女はどこか不気味な黒い影に見えます。少し夫を責めるような視線を投げたり、やはり嬉しいと涙を見せたり、ここはもう田中絹代の抑えた名演技に引き込まれっぱなしでした。やがて、彼女は朝日の中へ消えていく。一方、1人の男性を獲りこむために存在した朽木屋敷も美しく幻想的な怖さがいいし、闇に消えた若狭と右近も魔性そのもの、素晴らしかったです。
 それに田中絹代さん演じる奥さんが槍で殺されるときに、あっけなく突かれて死んでしまう。もっと悲劇的に見せてもよさそうなものを俯瞰な気持ちで見てしまう残酷な映像。

 能の様式美を取り入れて日本的な様式美。屋敷の風情、京マチ子さんの化粧に装束。それに城下町の賑わいがあり、侍たちや落ち武者たちや戦争の死がすぐ身近にあるということ。
 そうした日本的なものに、金銭欲、権力欲といった古今東西、普遍的なテーマがしっかりと見せてくれる素晴らしい映画でした。

☆☆☆☆☆

鑑賞日: 2013/05/14 DVD

監督溝口健二 
脚本川口松太郎 
依田義賢 
出演京マチ子 
水戸光子 
田中絹代 
森雅之 

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