●こんなお話
日本の新聞記者となったアメリカ人が警察とヤクザ社会を取材する話。
●感想
アメリカ人と日本の刑事が、とある交渉のためにヤクザと向き合う場面から物語は幕を開ける。場面はそこから過去へと遡り、主人公の若き日々が描かれる。アルバイトをしながら学び、ついには新聞社に就職。夢を抱いて社会に飛び込んだ主人公は、上司や同僚とぶつかりながらも、記者としての一歩を踏み出していく。
そんな中、歌舞伎町でのとある男性の昇進自殺がきっかけとなり、背後に潜む闇金業者の存在を疑い始める。借金によって人が追い詰められていく様子を追いかけるうちに、主人公は都市の闇へと深く足を踏み入れていく。
取材を進めていく中で、ヤクザ社会との関わりが生まれる。古くからの組織に属する組長や若手の構成員たちと接触し、また一方で敵対する新興勢力の存在も浮かび上がってくる。緊張が高まる中、組同士の衝突が起こりそうな気配を見せ始め、事態は静かに緊迫感を増していく。
刑事もまた、敵対する組織の情報を追いかけつつ、裏で密かに情報戦を繰り広げている。味方のようでいて裏切りが潜む世界において、誰が信じられるのか分からなくなるような緊張感が続く。
その一方で、歌舞伎町のホステスとして働く女性と主人公との間にも交流が生まれる。自分のお店を持ちたいという夢を持ったその女性は、若手のヤクザとの間に恋が芽生えていく。また彼女の友人が失踪する事件も起こり、街を駆け回りながらその行方を追う姿が描かれる。
物語を支える映像の力も印象的で、東京の街並みをスタイリッシュに切り取った映像は、それだけでも目を奪われる美しさがありました。特にネオンがきらめく夜の街や、古びた雑居ビルの階段など、空気を映し取ったような質感が心に残ります。アメリカの製作チームが手がけていることもあって、いわゆるヘンテコな日本描写ではなく、ひとつの都市としての東京の魅力を丁寧に映していたのが嬉しかったです。
ただ、物語の中心にいるはずの主人公が、物語の外側から眺めているような構図になっていて、実際に動いているのは刑事やヤクザたちであるため、このシーズンだけで見てしまうと物語の大きな動きは少なめだったように感じました。
たとえば、主人公が掴んだ情報から、刑事が空港での麻薬密輸を捜査する展開や、ホステスの女性が失踪した友人を探す流れなど、いくつかの展開はありましたが、大きく話が動くというよりは、舞台の輪郭をなぞっている印象が強かったです。
ヤクザ側の物語でも、組長の家に刺客がやってくるというシーンがひとつの盛り上がりにはなっていましたが、それ以外はわりと静かな時間が流れていく構成で、街の喧騒のなかにじっと張り詰めた緊張感を感じるような、そんな作りでもありました。
とはいえ、まだ事件は解決しておらず、主人公を取り巻く人々の物語も終わりを迎えていません。この世界がこれからどんなふうに動いていくのか、次のシーズンへの期待が高まる、そんな作品でした。
☆☆☆
鑑賞日:2023/03/02 WOWOW
監督 | マイケル・マン |
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デスティン・ダニエル・クレットン | |
HIKARI | |
ジョセフ・クボタ・ラディカ | |
アラン・プール | |
脚本 | ジェイク・エーデルスタイン |
J・T・ロジャース |
出演 | アンセル・エルゴート |
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渡辺謙 | |
菊地凛子 | |
伊藤英明 | |
笠松将 | |
山下智久 | |
菅田俊 | |
谷田歩 | |
萩原聖人 | |
豊原功補 | |
伊藤歩 | |
渡辺真起子 | |
板谷由夏 | |
松田美由紀 | |
レイチェル・ケラー | |
エラ・ルンプフ | |
オデッサ・ヤング |