映画【パイプライン】感想(ネタバレ):石油を巡る地下計画と小さなホテル──型破りな強奪劇のゆくえ

PIPELINE
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●こんなお話

 悪い大企業の社長に石油窃盗を依頼されるけど奴隷契約で揉める話。

●感想

 物語の発端は、ある男が石油管にドリルで穴をあける場面から始まる。自らを凄腕のドリル職人と名乗るその男は、周囲に緊張感を走らせるが、作業は失敗に終わり、大爆発が発生。彼は火傷を負いながら現場から逃走する。その事件の容疑者として浮かび上がったのが主人公で、警察が訪ねてくるが、すぐに本人ではないと判明し、事態は別の方向へと進んでいく。

 その後、主人公は大企業の社長から極秘の仕事を持ちかけられる。なんと石油を企業のパイプラインから盗むという大胆な計画である。主人公はこの危険な提案を受け、個性豊かな仲間たちと共に、誰も泊まらない郊外のホテルに拠点を構える。そこから地下に向かって少しずつ掘り進めていく日々が始まる。

 作戦は一見、地道で静かなものに見えるが、裏では社長の厳しい監視が続いていた。逃げ出そうとすれば命はないと脅される緊迫感のなか、仲間の一人が入院中の妻に会いたいと訴え、それに応じた主人公が監視カメラに細工を施すなど、ヒューマンな交流も描かれていく。一方で、外から工事音に気づいた警官が現場に近づいてくるというヒヤヒヤする場面もあり、物語は穏やかながらも常に緊張の糸が張られている。

 やがて、社長の真の狙いが浮かび上がる。彼は石油の貯蔵所を爆破することで供給をコントロールし、価格をつり上げて自分だけが儲けようとしていた。しかし、それに気づいた主人公たちは密かに対策を講じていた。実際に貯蔵されていたのは石油ではなく水だったことが判明し、裏をかかれた社長が激怒。怒り狂った彼と部下たちは主人公たちに襲いかかるが、最終的にはもみ合いの末に警察が踏み込み、関係者全員が連行されて物語は収束する。

 全体としては、テンポのよいコメディ風味の強奪劇という体裁で、100分ほどの時間を気楽に楽しめる作品になっていたと思います。登場人物それぞれがユニークな役割を持ってはいるのですが、ケイパーものとしてのチームプレイの面白さはやや物足りなさを感じました。特に、主人公以外のメンバーが持ち味を発揮して危機を乗り越えるような場面は少なく、やや淡泊な印象を受けました。

 また、社長側の監視や圧力をどうかわしていくのかという駆け引きも、もう少し意外性や緻密さがあればさらに楽しめたかもしれません。ラストの対決シーンについても、ドタバタのもみ合いでそのまま終わってしまった印象があり、盛り上がりとしてはやや控えめだったように思います。

 とはいえ、気軽に見られる娯楽作としての魅力はしっかりとあり、キャストの軽妙なやりとりや、石油泥棒というユニークな題材に興味を惹かれる1本でした。

☆☆☆

鑑賞日:2023/03/02 WOWOW

監督ユ・ハ 
脚本ユ・ハ 
キム・ギョンチャン 
出演ソ・イングク 
イ・スヒョク 
ウム・ムンソク 
ユ・スンモク 
テ・ハンホ 
ぺ・ダビン 
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