●こんなお話
大会関係者とかアスリートとか政治家とかいろんな人が東京オリンピックが開催されるまでのもろもろの話。
●感想
世界的なスポーツの祭典が決まり、組織委員会が準備を進めていく中で、突如として感染症の拡大が起こり、果たして開催できるのかと不安を募らせる状況になっていく。さらに発言の失敗や関係者の不祥事なども重なり、その都度さまざまな立場の人々が対応に追われる姿が映し出されていく。ドキュメンタリーは、そうした一連の動きを多角的に描いています。
会場の座席を満席の観客に合わせて組み立てる人々、選手村で食事を準備するスタッフたち、延期によってコンディションの維持に苦心するアスリートたち。それぞれの立場で葛藤や努力が積み重なっていく。子どもたちに「間違っていたのは社会であって君たちではない」と涙ながらに語る姿は胸を打つものがあり、また野村萬斎が伝統を大切にしたいと思いながらも、それが十分に伝わっていないことに落胆する姿も印象深い。バッハ会長がデモの人々に対話を試みる場面では、怒号にかき消される姿もあり、デモそのものが本当に民意を映し出しているのかという問いかけを含んでいました。
観ていて、一つのイベントにこれほど多くの人が人生を懸けているのだと驚かされました。関わる人々の思いや立場が交錯していく様子は、ただのスポーツイベント以上の重みを持って伝わってきます。ドキュメンタリーは公平で中立なものではないと理解していますが、監督自身の存在感が強くにじみ出ていて、作り手の視点がどこにあるのかを感じ取れるのもまた特徴的でした。とても興味深い1本であり、同時代を生きた人間として振り返る価値がある映像記録だったと思います。
☆☆☆
鑑賞日:2023/01/06 Amazonプライム・ビデオ
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総監督 | 河瀬直美 |
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