映画【THE 有頂天ホテル】感想(ネタバレ):豪華キャストで贈る年越し群像劇

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●こんなお話

 大晦日のホテルでいろんな人がいろんな事態に陥っていく話。

●感想

 年末のホテルが舞台の物語。大みそかのカウントダウンパーティーの準備で忙しくなる高級ホテルで、副支配人を中心に、スタッフや訪れる客たちのさまざまな騒動が交錯していきます。

 副支配人はかつての妻とホテルで偶然再会し、今の自分の仕事を隠したくてつい見栄を張り、「その年の人に選ばれた」などと嘘をついてしまいます。一方、仕事を辞めようとしている若いベルボーイや、子どもを育てながら働くシングルマザーの客室係など、それぞれに事情を抱えたスタッフたちもまた、年末の騒がしい一日に巻き込まれていきます。

 ホテルの中では、毎年自信をなくしてしまう歌手が登場し、彼女を励ます場面があったり、白塗りをした大道芸人が姿をくらましたり、そのガチョウが逃げ出してみんなで探し回ったりと、まさに“年末進行”的なバタバタの連続です。さらには、こっそりホテルに入り込んだ売春婦と、彼女と偶然出会った政治家のやりとり、そしてその売春婦の持つ問題の写真をなんとか削除しようと奮闘する鹿の研究家まで現れて、まさに“てんやわんや”な群像劇が展開されます。

 豪華キャストが登場する三谷幸喜作品らしく、誰がどの役で出てくるのかを楽しみにしながら観ることができる一本で、キャストそれぞれの得意なテンポや台詞回しが活きた会話劇になっています。複数のエピソードが同時進行で描かれ、最終的にはさまざまな出来事が一つにつながっていき、迎えるカタルシスのあるラストには、「なるほど」とうなずける展開も用意されていました。

 ただ、率直に言うと「面白かった!」と手放しで言えるかというと少し迷ってしまう部分もありました。出演者の顔ぶれがとても豪華なぶん、どうしても「あの人が出てる」「この人も出てる」という驚きが先に立ってしまい、キャラクターとしての面白みや深みにまでは至っていないように感じる場面もありました。それぞれの登場人物の背景がサラリと紹介されるだけにとどまってしまっていて、どこか“役の魅力”よりも“役者の魅力”に引っ張られてしまう印象でした。

 また、同時進行で描かれる短いエピソードが多くて、ひとつひとつがやや浅く感じてしまい、観ているうちに少しずつ飽きが来てしまったのも正直なところです。「このキャラクターってこの話に本当に必要だったのかな?」と疑問に思う登場人物もちらほらいて、群像劇としてもう少し整理されていたら、もっとスッキリと物語に入っていけたのかもしれません。

 とはいえ、その場その場で巻き起こる事件やトラブルに対して、登場人物たちが右往左往しながらも一生懸命に対応していく様子は、観ていてとても楽しく、心温まるものがありました。お祭りのようにわちゃわちゃした大みそかの空気をそのまま閉じ込めたような映画で、「こういうドタバタを年末に観るのも悪くないな」と思わせてくれる作品でした。

☆☆☆

鑑賞日: 2015/10/25 NETFLIX 2024/11/07 U-NEXT

監督三谷幸喜 
脚本三谷幸喜
出演役所広司 
松たか子 
佐藤浩市 
香取慎吾 
篠原涼子 
戸田恵子 
生瀬勝久 
麻生久美子 
YOU 
オダギリジョー 
角野卓造 
寺島進 
浅野和之 
近藤芳正 
堀内敬子 
梶原善 
原田美枝子 
唐沢寿明 
津川雅彦 
伊東四朗 
西田敏行 

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