ドラマ【ウォーキング・デッド:ワールド・ビヨンド】感想(ネタバレ):若者たちが歩む終末世界、希望と葛藤が交差する新たなサバイバルドラマ

The Walking Dead: World Beyond
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●こんなお話

 死者が蘇る世界になってから10年経っての若者たちの話。

●感想

 世界がすでに崩壊した後の時代。ゾンビが日常の一部となってしまった社会のなかで、生き残った若者たちが中心となって描かれていく。登場するのは、姉妹を中心としたグループ。彼女たちの父親が、かつて「ウォーキング・デッド」にも登場したヘリコプターの集団に連れて行かれてしまい、その行方を追っていく物語となっていた。

 行方不明となった父親をめぐって、若者たちは荒廃した世界を旅することになる。姉妹とその仲間たちの4人の若者。そして彼らを追っていく2人の警備員という構図で、それぞれの行動が交錯していく。その過程で、登場人物たちの過去や内面が丁寧に描かれていくスタイルとなっており、旅の最中で出会う人々や場所を通じて、それぞれの悩みや葛藤が明らかになっていく。

 構成としては、各話ごとに登場人物に焦点を当てながら物語を進めていく手法が取られていて、これは本家「ウォーキング・デッド」でもおなじみの形式。それだけに、ゾンビのいる世界で生き延びるということがもはや当たり前のこととなっていて、何を描くかではなく、どう描くかが問われるシリーズだったように感じました。

 今回のスピンオフに登場する新たなキャラクターたちは、10代から20代前半の若者たちで構成されていて、無計画で衝動的な行動が目立つ場面も多い。その無軌道さが若さゆえのリアリティでもあるのだけれど、個人的にはそこに魅力を感じるのはやや難しかった印象があります。姉妹の関係や、かつて父親を手にかけたのではと疑われる少年、彼を見守るもう一人の少年など、それぞれに背景はあるものの、感情移入までは至らなかったのが正直なところです。

 さらに彼らを追う立場の2人の警備員にもそれぞれ過去が描かれていく。命令に従うだけではない彼らの人間味や葛藤も浮き彫りになっていくのですが、本編シリーズの中盤から後半で描かれていた構図とあまり大きな違いがなく、どこか既視感を覚えながら見進めることになりました。

 終盤、物語が動き始めるのはラストの2話あたり。メインの登場人物の中に裏切り者がいるのではないかという疑念が生まれ、グループの中で不穏な空気が漂い始める。そこからようやく話が転がり出し、どうなるのかと興味が湧いてくるタイミングでシーズンが終わってしまう構成でした。この終わり方が、逆に続きを見たいという気持ちにさせてくれる部分もあるかもしれませんが、もう少し早く盛り上がりの波が訪れてほしかったという印象もあります。

 全体としては、ゾンビが存在する世界観の中で、それでも日々を生き延びることに意味を見出そうとする若者たちの群像劇。スピンオフという位置づけとして、過去のシリーズを見ているファンにとってはおなじみの要素も多く、世界観に入りやすい構成ではありました。ただ、本編の重厚感や緊張感を求めている方にとっては、少し物足りなさを感じる部分があるかもしれません。

 それでも、世代を交代した若者たちによる「生きる理由」を模索する姿には、また新たなシリーズの始まりを感じさせてくれる要素もあったと思います。

☆☆

鑑賞日:2021/04/28 Amazon・プライム

監督マグヌス・マッテンス
脚本スコット・M・ギンプル
出演アレクサ・マンスール
ニコラス・カントゥ
ハル・カムストン
ニコ・トルトレッラ
アネット・マヘンドル
ジュリア・オーモンド
ジョー・ホルト
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